【意識が変わる!】ウォーミングアップではなく、プレパレーション!?
今回は野球のウォーミングアップについて迫っていく。現在ネクストベースのパフォーマンスコーチを務めている庄村さんに来ていただいてお話を伺っていく。
ウォーミングアップの目的と効果
庄村:ウォーミングアップは2つ大きい目的があります。1つはパフォーマンスを最大化することです。もう1つは怪我のリスクを減らすこと。この2つに尽きるかなと思います。
森本:ウォーミングアップの効果はどんな効果があるのですか。
庄村:大きく2つあって、1つは体温が上がることによって得られるいい効果と、あとは体温に関係しないけど、運動を続けていくことで、得られる効果ですね。体温が上がると、筋肉が伸びやすくなって可動域が高まるとか、あとは神経の活性が良くなって、大きい力を出せるようになるとか、パフォーマンスを最大化することにつながりやすいかなと思います。
森本 :体温を上げるっていう目的で言うと、よくお風呂入るとかでもいいんですか。
庄村:そうですね。そういう意味では体温を上げるということだけだといいんですけど、体温が上がっても改善されないことがあるので、それはやっぱ運動しなきゃいけないですね。夏とかだともう立ってるだけで汗出るから、もうあったまってますみたいな人たまにいるんですけど、ただ温まるだけではウォーミングアップは完了しないというのは、1つ重要なところかなと思います。
効果的なウォーミングアップ
庄村:いろんなことを言ったりしてますけれども、僕が一番しっくりきているのは、ランプシステムと言って、ジェフリーさんという方が提唱しているものですね。
「The Warm-up」という本も出ていて読んだんですけど、まずは体温が上がることによって得られる効果というものが非常に多いので 、一番最初に体温を上げるようなことをします。これはどんなことやってもいいんですけど 、一般的なものだと軽くジョグしたり、バイク漕いだり、そういったものが含まれます。その次に体を活性化したりとか、可動域を出したりするもの。ストレッチとか、いろんな各種ドリルとか刺激を入れるみたいなものはここに含まれるんじゃないかなと思います。そして最後にしっかりと高い強度で運動を行うっていうことですね。試合ってどうしても120%ぐらい出るので、 ウォーミングアップの中で最後しっかり100%を出す。リハーサルという言葉でよく言われますけど、スプリントリハーサルが低くアップで 70~80%しか出してないと、試合で100%以上が出た時にギャップがどうしても大きくなってしまうので、なるべくそのギャップを 小さくする意味で、スプリントリハーサルは非常に大事になってくるかなと思います。
ウォーミングアップの注意点
森本:よくある間違いとか、陥りがちみたいなとこってありますか。
庄村:やりすぎかなと思いますね。
森本:やりすぎると逆にパフォーマンス下がってしまうみたいなことですか。
庄村:そうですね。やればやるほど疲労が蓄積するので。やればやるほどもちろんパフォーマンスも上がりやすいんですけど、やりすぎることで疲労が蓄積してくると結果的に落ちてしまうので、どう最適化するかっていうのはすごく重要になってくると思います。
森本: 何を目安に満たしているかを確認すればいいですか.
庄村:最終的にはパフォーマンスじゃないかなと思いますね。もちろん筋肉の温度が最後ちゃんと上がりきらなかったら、パフォーマンスが上がらないので、どうやってパフォーマンスを最大化するかで、その最大化するために、どういったことをどう順序立ててやっていくか、みたいな感じかなと思います。
神事 :結構難しくないですか。今日球が速いな。そういえばアップ、ちょっと短かったからかなとかっていう、パフォーマンスを数値化できてないと、ウォーミングアップの自分の中のしっくり来るか来ないかだけで、どうしても評価してしまいそうな気がするし。そうなるとやっぱ不安だから長くしちゃう。適正なウォーミング アップを判断することは難しいですね。個人差もあるんですか。
庄村:個人差もあります。不安でやりすぎてしまう、もし結果 が 良くなかった時に、あんまりやってなくてよくなかったのと、やりすぎてしまって良くなかったのというので、自分の中での腹落ちの仕方が違ったりすると、不安でやりすぎるは結構多いと思います。
神事:そういう場合、どうしたらいいんですか。
庄村:ひとつ例としては一回ブルペンで、自分は何球ぐらい投げたらマックスに近づいていくのか試してみる。肩ができるのが早い人遅い人いますけど、自分のパフォーマンスがどうやったらどれぐらいで高まるのかを他の人と比較して知っておくことは普段からやっておくのは1つありかなと思います。 例えばスクワットジャンプとかでも回数やってて、大体何回ぐらいやって いくと最大値が出るのか。5回で最大値出るんだったら10回ウォーミングアップする必要はないと思いますし、自分の体の特徴を普段から知るための努力は1つ大事な視点と思います 。
森本:2次アップ、3次アップがあったりするじゃないですか。これはどのくらい残るんですか。
庄村:何もやっていない時間だったりとか、その時の過ごし方によっても結構大きく変わってくるので、一概にはなかなか難しいですね。ただプロ野球の場合、ホームだと練習終わってから試合までに2~3時間あったりとかするので、その前にもう1回、 2回目のウォーミングアップをしたり、面白いものだと、クローザーのピッチャーはアップしてから6時間後に 登板がくるとか、そういったことも全然あるので、どうやって本番に向かって仕上げていくかの話になると、練習ではどれぐらいまで100%に近づける必要があるのかとか、ウォーミングアップ難しいですよね。
神事:ウォーミングアップの前にウェイトやる方もいるじゃないですか。それ僕めっちゃ好きなんですよ。なんかすごい力が入る感じがして。あれもウォーミングアップといえばウォーミングアップなわけですよね。なんか出力上がるなみたいなことを思っていて、そうすると結構短い間に体できるような感覚もあって。それはなんで僕はそう思ったんですか?
庄村:2020年以降ぐらいに出てきた研究ですけど、レジスタンスプライミングというのがあったりもして。 高度の刺激を一回入れておくと、その数時間後のパフォーマンスが高まりやすいっていうのは、いろんな要因から説明がされるような研究が最近出てきているので、例えばナイターなら午前中ガチッと一発重たいスクワットをしてから行くと出力が上がりやすいみたいなものは実感されていたことが今研究で進んできてるとこかな。
神事:ようやく追いついてきたかなというところですね。
目的別ウォーミングアップのススメ
森本:練習と試合だとまた許される時間に違いもあると思うんですけど、ウォーミングアップで変えることはありますか。
庄村:そうですね。ウォーミングアップっていう言葉がそもそも最近どうなのかっていう議論が結構あって、言い換えるならプリパレーション、つまり準備みたいな感じですね。ただ、もっと言えばオフシーズンの野球選手は、練習しないで、ウェイト場にいきなり来るパターンもあるので、そうすると、トレーニングのための準備、練習のための準備、 試合のための準備っていう意味では、目的は全然変わってくるので、それぞれに適したウォーミングアップ 、プリパレーションをしていかないといけないというのはありますね。具体的には試合で言うと一番パフォーマンスが高くなればいいですけど、練習だとトレーニングの要素が必要だったりすることもあるので、長期的に選手が向上していくためにトレーニング要素を組み込みながらやるとか、そういったことは大事かなと思います。
森本 :今日はウォーミングアップについて、庄村さんに語っていただきましたけれども、神事さんいかがでしたか。
神事: ウォーミングアップは何をすべきかを指導者は知っておくべきですし、選手個人で言うと、どういう特性があるのか、どこを怪我しやすいのかを考えながら、自分自身の体を知ることはとても大事だなと思いました。ウォーミング アップというタイトルではありますけど、結局自分を知ることがかなり大事だなと。
庄村:みんなやりますからね。小学生からプロ野球選手まで。ウォーミングアップしない人っていうのはいないんで。毎日やるものだからこそ、ルーティン化、マンネリ化しやすいですけど、ちゃんと自分の体に教えながらやることは、自分の体を知ることに繋がると思って、明日から自分の体と向き合いながらやってほしいなと思います。
森本:本当に全員が関わるテーマですので、ぜひこのチャンネルとか動画もいろんな人に薦めてもらって、チャンネル登録をしていただけたらと思います。
次回もまたよろしくお願いします。本日はありがとうございました。
パフォーマンスを向上させること、また怪我のリスクを減らす上でも大切なウォーミングアップ。どのスポーツにおいても必要不可欠になってくる大事な工程である。これを機に皆さんのウォーミングアップをもう一度見直してみてはいかかでしょうか。
Baseball Geeks編集部