防御率に代わる投手の評価指標FIPとは!
これまで投手を評価する指標として、防御率が多く用いられてきた。しかし、この防御率は投手の能力を適切に評価できているのだろうか。そこで今回は、セイバーメトリクス指標の中から投手の純粋な能力を表す「FIP」と呼ばれる指標について考察していきたい。
参考:打者の評価指標OPSとは!
これまで投手の評価に用いられてきた「防御率」
防御率は、失点のみを使って投手を評価する。そのため防御率は、投手の能力だけではコントロールできない要素の影響も受けてしまう。ヒット性の当たりが野手のファインプレーによりアウトになったり、打ち取った打球でも運悪く出塁を許すことで成績が変わることも多い。
このように、防御率は守備の要素や運の要素によって大きく左右されるため、これだけで投手の能力を完全に評価できているとは言い難い。そこで、防御率に代わるFIPという指標について解説していきたい。
セイバーメトリクス指標「FIP」とは
FIP(Fielding Independent Pitching)とは、直訳すると「守備から独立した投球内容」となり、被本塁打・与四死球・奪三振のみで投手を評価する指標である(図1)。防御率と同様に値が低いほど投手の能力が高いことを示す。
ここで注目したいのが、この指標では単打や二塁打、三塁打、ゴロやフライアウトなど、「野手のプレーが関与するイベント」が評価の対象から除かれているという点だ。
FIPは投手の純粋な能力を測る指標!
安打やゴロ・フライアウトなどは「野手のプレーが関与するイベント」で、投手の能力のみではプレーが完結しない。一方、本塁打・四死球・三振は「野手のプレーが関与せず、投手の能力のみによって完結するイベント」である。つまり、FIPとはチームの守備力や運に左右されず、投手の純粋な能力を表すことができる指標だといえる(図2)。
FIPを用いた投手評価
しかし、本当に被本塁打・与四死球・奪三振だけで投手の能力を評価できるのだろうか。図3にプロ野球の過去25年のデータから球団ごとのFIPと平均失点の関係を表した。FIPが悪化すると、チームは平均失点も右肩上がりに増加していことがわかる。つまり、FIPは投手の失点のリスクを評価することができる指標だといえる。
FIPが低い投手は優れている投手の証!
ここまでFIPの指標について解説してきたが、昨シーズンのプロ野球のFIPランキングを先発投手と中継ぎ・抑え投手に分けて見てみよう(表1、2)。
先発投手では、パ・リーグ最優秀防御率の山本(オリックス)や、セ・リーグ3冠に輝いた山口(読売)らがランクインしている。
中継ぎ・抑え投手で見ると、最優秀中継ぎのロドリゲス(中日)・宮西(日本ハム)や、両リーグ通じて最多セーブの松井(楽天)などがランクインしている。
順位 | 選手 | FIP |
---|---|---|
1 | 山本 由伸 | 2.69 |
2 | 山口 俊 | 2.71 |
3 | 髙橋 遥人 | 2.81 |
4 | 有原 航平 | 2.97 |
5 | 今永 昇太 | 3.14 |
投球回が100回以上の投手が対象
順位 | 選手 | FIP |
---|---|---|
1 | ジョンソン | 1.05 |
2 | 宮西 尚生 | 1.62 |
3 | 松井 裕樹 | 1.78 |
4 | ロドリゲス | 1.88 |
5 | ドリス | 2.01 |
投球回が40回以上の投手が対象
また、先発投手と比較すると、中継ぎ・抑え投手のFIPが低い。先発投手は長いイニングを投げることを目指しているため、時にはゴロで打ち取る投球も織り交ぜて球数を抑える必要がある。一方、中継ぎ・抑え投手は登板イニングが短いため、勝負球を投げ込んで奪三振を狙った投球が多いのであろう。
このような投手としての役割や投球スタイルの違いがFIPの差に表れているのかもしれない。
参考:「先発タイプ」ってどんな投手?持ち球からその適性を考える
様々な指標を用いた適切な選手の評価を!
今回は、投手の能力を評価する指標としてFIPを紹介してきた。しかしFIPにも、グラウンドボーラーが過小評価されやすいという問題点もある。そのため、投手のタイプをきちんと把握し、適切な指標を用いて投手を評価することが重要となる。
様々な指標を用いて適切に投手を評価することで、その投手の本当の価値を見出すことができるのではないだろうか。
Baseball Geeks 編集部