【セ・リーグ】Bクラスの前半戦をポジション別OPSから分析
120試合に短縮されて開幕した今シーズンのプロ野球も前半戦が終了した。今回は8月終了時点でのセ・リーグBクラスのこれまで戦いをポジション別OPSから振り返るとともに、後半戦の戦い方について考察する。
参考:【セ・リーグ】Aクラスの前半戦をポジション別OPSから分析
中日:打力の底上げでAクラス入りを目指す
前半戦の終盤に勝ち星を積み重ねた中日は一塁手のOPSが最も高い(表1)。これは同ポジションで固定起用されている4番ビシエドの打撃面での貢献の大きさを表している。今後も打線の主軸として安定した活躍に期待したい。
しかし、その他全てのポジションのOPSはリーグ平均を下回っている。特に、リーグ平均が最も高い三塁手では他チームにかなり差をつけられている。高橋周平の一時離脱の影響もあるが、Aクラス入りを目指すためにはこの差を少しでも縮めていくことが必要不可欠だろう。
多くのポジションでOPSがリーグ平均を下回っているにもかかわらず、一時はAクラス入りを果たした中日。その要因のひとつに投手陣の活躍が挙げられる。球団記録に並ぶ5戦連続完投勝利を達成した大野雄大や新戦力Y.ロドリゲスなど、先発投手が安定してきている。再びAクラス入りを目指すために、後半戦ではひとつでも多くのポジションで平均程度の打力を確保し、投手陣を援護していきたい。
広島:チームを支える4番鈴木誠也の打撃力
広島の最大の強みは、何と言っても4番鈴木誠也の打力だろう。鈴木の守る右翼手はセ・リーグ全ポジションで最高のOPSを記録しており、まさに彼の打撃がチームを支えているといっていいだろう(表2)。
しかし、5つのポジションでOPSがリーグ平均を下回るなど課題も多い。特に左翼手は、多くのチームが強打者を配置しているだけに打撃面での弱みとなっている。これ以上他チームと打力の差を作らないためにも、新外国人のピレラや移籍2年目の長野久義の今後の活躍に期待したい。
また、リーグ連覇時には「タナキクマル」の一角を担った二塁手の菊池涼介と遊撃手の田中広輔は影を潜めている。彼らは既にベテラン選手と呼べるが、それぞれのポジションで固定出場している。打力の低迷や年齢も考慮すると、新たな「打てる二遊間」の台頭が待たれる。
ヤクルト:若き主砲とベテランの力で巻き返しを図る
一時は首位にも立ったヤクルトであるが、現在は投打がかみ合わず負けが大きく先行している。しかし、そんなチーム状況でも一塁手のOPSはリーグトップであり、左翼手のOPSもリーグ2位と高い値を記録している(表3)。これは、一塁手としての起用が多い若き4番村上宗隆とプロ18年目のベテラン坂口智隆、さらに左翼手を守るキャプテン青木宣親の活躍が大きく影響している。
一方、捕手と右翼手のOPSはリーグ平均を大きく下回っている。捕手に関しては、全球団の全ポジションの中で最も値が低い。これは、開幕直前で離脱した中村悠平の穴を控えの捕手陣が埋めることができなかったことが原因だろう。また、右翼手は複数の選手が起用されている。今後順位を上げていくためには、固定出場させられる得点源の確保が必要となるだろう。
各チームの4番打者が打線を牽引
ここまで、8月終了時点でのセ・リーグBクラスの3チームのポジション別OPSをみてきた。
中日はビシエドが打線を引っ張っているが、ほとんどのポジションでOPSがリーグ平均以下である。投手陣が好調なだけに打撃陣の奮起に期待したい。広島は鈴木の守る右翼手でリーグ最高のOPSを記録しているものの、内野手のマイナス要素が大きい。ヤクルトはベテラン勢と若き主砲の活躍が光るが、リーグ最低値である捕手のOPS向上が欠かせない。
3チームとも優勝争いから遠ざかっているものの、打線の軸である4番はいずれも好調である。彼らを中心に打線を奮起させ、後半戦の巻き返しに期待したい。
Baseball Geeks編集部