阪神の新外国人アルカンタラを分析!KBO最多勝投手の投球をデータで紐解く!
昨シーズンの阪神では、秋山拓巳・西勇揮・青柳晃洋が年間を通して先発を担っていた。しかし、高橋遥人のコンディション不良や藤浪晋太郎の中継転向などの影響もあり、安定してローテーションを守れる先発投手のコマ不足に悩んだ。 このような背景もあり球団は、2020年のKBO(韓国プロ野球)で最多勝となる20勝をあげたラウル・アルカンタラを獲得した。
そこで今回は、阪神先発陣の一角を担うことが期待されるアルカンタラが、最後にメジャーで投球した2017年のトラッキングデータを分析していく。
参考:日本ハムの新外国人ロビー・アーリンを分析!高い制球力で新エースとなれるか!
速球系の球種を軸とするパワー型投手
はじめに、平均球速と投球割合をみていく(表1)。全ての球種において、メジャー平均よりも速い球速を記録している。
2017年シーズンのデータを分析。カッコ内はメジャー平均
また、投球割合は速球系の球種(4シームと2シーム)が62%を占めており、速い球速帯で打者を抑えるパワー型の投手であることがわかる。その他には、スライダーやチェンジアップをバランスよく投球している。
ゴロ量産のカギを握る4シームと2シーム!
続いて、各球種のボール変化量をみていく(図1)。最も投球割合が高い4シームは、シュート方向に垂れるボールだ。球速が速いこともあり、ゴロを量産できそうな球質といえる。2シームは、これよりさらにシュートしながら沈むボールである。これらの球種は連続量であるため、打者はどちらのボールを打ったのかわからないこともあるかもしれない。
図1 各球種のボール変化量。速球系の球種はゴロを打たせやすい球質
また、スライダーは比較的変化が小さいボールだ。しかし、軸となる速球系球種のシュート成分が大きいため、打者は実際以上に変化を感じるかもしれない。左右どちらの打者からも奪空振りを期待できるボールだ。チェンジアップは、変化量自体は速球系の球種にかなり近い。しかし、球速には約10%の差があるため、奥行き系のボールとして使えそうだ。
図2 2017年のリスク管理表。ゴロ割合がメジャー平均を大きく超えている
最後にリスク管理表をみてみる(図2)。まず注目すべきは、圧倒的なゴロ割合の高さだ。先述の通り、投球割合が高い4シームと2シームはいずれもゴロを打たせやすい球質で、それらが機能していることがデータからもわかる。さらに四死球割合の少なさにも要注目だ。速球系の球種を軸にするパワー型投手でありながら、かなり制球に優れていることがわかる。これらを考慮すると、安定して長いイニングを消化する先発投手として活躍してくれるに違いない。
懸念点を挙げるとすれば、完全アウトの割合が低く、リスクの高い外野フライやライナーが多いことだ。この点に関しては、スライダーとチェンジアップの使い方がポイントとなりそうだ。
阪神の新たな勝ち頭となれるのか!
ここまで、アルカンタラのメジャー時代の投球をみてきた。球速の速いパワー型のゴロ投手で、制球力にも優れていることから、日本でも安定した投球に期待がかかる。また、昨シーズンのKBOでは31試合のうち27試合でQS(クオリティースタート)を達成しており、投手としての完成度は今回紹介した2017年よりも高いかもしれない。韓国での経験を経て一段とパワーアップしたアルカンタラが、チームを2005年以来のリーグ優勝に導くことができるのか注目だ。
ラウル・アルカンタラのプロフィール
Raúl Alcántar
1992年12月4日生まれ(28歳)、右投左打
アスレチックス(2016-2017)ーKTウィズ(2019)ー斗山ベアーズ(2020)ー阪神(2021)
【メジャー通算成績】
13試合 2勝5敗 防御率7.19
【KBO通算成績】
58試合 31勝13敗 防御率3.22
Baseball Geeks 編集部