【プロ野球】オープン戦の活躍はシーズンに直結するのか?~投手編~
毎年レギュラーシーズン(以下、シーズン)開幕前に行われるオープン戦は、主力選手にとっては最終調整の場として、若手選手としては開幕一軍をつかみ取るアピールの場として重要な役割を担っている。一方、シーズンでの成績や活躍を占う機会としてオープン戦を楽しむ野球ファンも多いだろう。
今回はオープン戦でどの投手指標をみれば、選手のシーズンでの活躍を予測できるのかを探っていく。
参考:【プロ野球】オープン戦の活躍はシーズンに直結するのか?~打者編~
OP戦での最優秀防御率投手のシーズン成績
プロ野球では、投手を評価する際に防御率がよく使われる。では、オープン戦で優秀な防御率を残した選手は、シーズンでも好成績を残す傾向にあるのだろうか。過去10年間に、オープン戦で最優秀防御率を記録した選手のシーズンでの成績をみていく(表1)。
中には2011年の田中将大や2016年の和田毅のように、最多勝を獲得するほどの活躍をみせた選手もいる。しかし、2014年のレイノルズや2019年の東明大貴のように、オープン戦とは打って変わってシーズンでは成績が振るわなかった選手もいる。つまり、オープン戦で低い防御率を記録できても、シーズンで同様の成績を残すことができるとは限らないようだ。
所属チームのオープン戦での試合数×1イニング以上投げた投手を対象。
奪三振率から投手の成績を予測
続いて、オープン戦とシーズンの様々な投手指標について相関係数をみていく(表2)。相関係数とは、2つのデータの間にどれくらい関係性があるのかを示す統計学的指標で、その関係の強さを「-1から1」の数字で表す。例えば、相関係数が0であれば2つのデータ間には関係性がなく、1に近いほど正の関係が、-1に近いほど負の関係が強いことになる。
1999年から2019年までの20シーズンにおいて50投球回以上の選手(延べ2372名)を対象
主要な投手指標について、オープン戦とシーズンの間で強い相関関係がみられるものはなかった。つまり、オープン戦での成績の良し悪しからシーズンの成績を予想することは少々難しいのかもしれない。しかし、その中でも奪三振率についてはやや相関関係がみられた。このことから、オープン戦で奪三振の割合が高い投手は、シーズンにも同様の成績になる傾向があるといえそうだ。
OP戦で好成績を残した森下・山岡・ムーアの活躍
奪三振は最も失点のリスクが低いイベントである。オープン戦とシーズンの奪三振率には相関関係がみられたことから、オープン戦で奪三振の割合が高い投手はシーズンでも同様に失点のリスクが低い好成績を期待できるといえるだろう。
参考:奪三振の重要性とは!勝てる投手のリスク管理能力を分析
それでは今シーズンのオープン戦で、奪三振率ランキング上位3名の選手たちがシーズンでどのような成績を残したのか振り返る(表3)。
広島・森下暢仁はルーキーながら2桁勝利を記録するなど、大車輪の活躍をした。即戦力投手として期待されドラフト1位で指名されたが、まさに期待どおりの働きをしたといえるだろう。オープン戦においてもシーズンにおいてもイニング数を上回る奪三振数を記録し、高い奪三振能力を披露した。
オリックス・山岡泰輔はシーズン序盤に負傷で離脱したものの、復帰後は主力投手としてチームを支えた。奪三振率や防御率では優秀な成績を記録しており、リーグを代表する投手として活躍したといえるだろう。
新外国人であったソフトバンク・ムーアは8月下旬からローテーションに定着し、圧巻のピッチングを披露した。日本シリーズでも優秀選手賞を受賞するなど、チームの日本一に大きく貢献した選手といえよう。ムーアも森下と同じくオープン戦においてもシーズンにおいてもイニング数を上回る奪三振数を記録した。今後の去就が注目されるところだ。
シーズンの成績予測には奪三振に注目!
今回は、オープン戦の成績とシーズンの成績にどのような関係があるのか分析を行った。強い関係がある投手指標はなかったものの、奪三振率についてはある程度似た成績になる傾向がみられた。オープン戦での奪三振率はシーズンの活躍を予想する際の判断材料として使えるかもしれない。今後、オープン戦の結果を見る際には奪三振率にも注目してほしい。
Baseball Geeks 編集部