平良海馬コラボ【前編】平良投手がデータで驚きの進化!?
球春が到来し、2023年のプロ野球が動き出した。今季の展望に胸躍らせる日が続く中、今回は昨シーズン61試合に登板し、最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得。そして、今シーズンより先発挑戦を表明している平良海馬投手を迎え対談を行った。
データとの出会い
森本:こういったデータに興味を持つようなきっかけ・出会いって、どんなものがありますか?
平良:3年前に神事さんと森本さんのピッチデザインを受けたことで、データに興味が出始めたっていう感じですね。
神事:その時はアリゾナで、菊池雄星投手の自主トレについてきていたというところで、平良さんがやんちゃな野球少年だったなっていうのは印象としては残っています。すごいコミュニケーション取れたし、大人な感じもしたけど、なんか楽しそうに野球やってる人という感じでした。
森本:初めてデータを計測してみた時に、「今まで思ってたものと違った」みたいなことはあったりしましたか?
平良:やっぱ球が速いので、「フォーシームが伸びていて、良いボールなんだろうな」と思っていました。ところが実はそんなに伸びていなくて、垂れてるぐらいの感じだったので、イメージとこのデータのギャップみたいのがすごく面白かったですね。
参考:【2021年】メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
森本:当時はちょうど一軍デビューした後ですよね。スピードでガンガン抑えていたんですけれども、実際にデータを測ってみたら、まっすぐが伸びていなかったと。
神事:ちょっとカット気味だったので、ボールが垂れていたというのはありますね。
平良:そうですね、球が速いだけの投手みたいな感じで。
非常識が常識だった?
森本:カット系だった球質の平良さんが、どういう風に変わっていったというところで変化に驚いた部分とかありましたか?
神事:まっすぐとカットボールが同じような球質になっていたのを、どうやって分けていくのかというところが最初の作業でした。ハイスピードカメラで見ながら、自分の指がどうなってるのか、ボールの回転がどうなってるのかって見ながらやっていくという作業は、今まであまり経験をしてないですよね?
平良:そういうのがあるっていう事がまずわからなかったんで、それを知れたっていうのがやっぱり一番大きかったですね。常識を覆されたというか、そんな気がします。
森本:データとか今まであまり経験なかったってことでしたが、結構面白かったんですか?
平良:面白かったですね。でも一番は、投げるコースが重要で、アウトコース低めに全部構えるじゃないですか、 キャッチャーも。それがまず違うっていうところが面白かったなと思いました。
参考:大谷翔平の今シーズンを大予想!【最終回:ストレート学】
森本:いわゆるこう、高めを使うとか、アメリカでもトレンドになりつつありますね。
神事:高めにちゃんと投げきれれば、ファールになってくれたり、空振りが取れたりというところ、また、そこの軌道に合わせてスライダー、ツーシーム、スプリットなどを生かすことができます。そのためには基準球となる真っ直ぐを高めに投げることが重要になるので、そういう意味ではそこをしっかりやってきたなとは思います。ただ、普通に言われてることと全く別のこと言われるのって不安じゃないんですか?
平良:不安はなかったですね。データもあるから、「やった方がいいですよ」というアドバイスをもらって、すぐ腑に落ちたというか、やらない意味がないっていう感じですね。
神事:1シーズンで70万球以上データがとれて、そこから導き出された真実みたいなところを僕たちも伝えていきたいです。でもそれを選手に伝える中で、本当にやるのかやれないのかっていう所は大きな差だなと思います。高めのまっすぐをバンバン投げる人って日本にいないので、平良さんが速攻やってくれたっていうのは、僕たちも見ていて、ハラハラする部分もありました。しかも僕たちが地面から100~105cmで「だいたいキャッチャーマスクを狙いましょう」って言ったら、その通りのところに投げられるし、それがちゃんとこういう形でタイトルや結果として現れてきたっていうのは非常に嬉しいなと思います。
シーズン中のデータの活用法
森本:シーズン中で「こういうものチェックしてるよ」とかありますか?
平良:対戦相手のデータとかですかね。「相手が何を打ってるのか」とか、「右ピッチャーで相手はどの球種を打ってない」とかっていうのを確認して、その次に自分がこの球種打たれてないかどうかを確認して、試合に臨んでいます。
森本:具体的にこのデータが気になるとかっていうのってあるんですか?
平良:リスク管理の表から自分のフォーシームの空振り・ゴロ・フライ・ファーボールとかファールっていう、球種別の特徴みたいなのを一番気にしてますね。
参考:奪三振の重要性とは!勝てる投手のリスク管理能力を分析
神事:リスク管理が球種ごとにどうなっているのか、対右バッター対左バッターでどうなっているのかっていうところを、2週間に1回ぐらいフィードバックながらというところを行いました。確かにリスク管理を見ると、自分の感覚と一致するところと、しないところがあるかなと。例えば、なんとなくあの時奪ったスライダーが良かったっていう風に思うんだけど、トータルで見てみると、実は対左バッターにとってみるとあまり良いボールじゃなかった。だから、「そこをもう少し別のボールに変えていきましょう」みたいな。それもピッチデザインだと思うんですけど、そういうものをしていったのがシーズン中だったかなと思います。
森本:失点しないために失点のリスクが低いイベントを増やしたい、そのために球種ごとに自分はどういう状態になってるのかを知って、かつ相手がどういうものが得意なのかって最終的に選んでいくというところですかね。
シーズンオフに取り組んでいること
森本:シーズンオフに主に取り組んでいるものであったり、チェックしてるものみたいなものはありますか?
平良:フォーシームの回転がまだまだジャイロ気味なので直すこととか、変化球を増やす時にそのどういうリリースされているかをスローモーションで見たりというのは毎年やってますね。あとは変化球の回転だったり、「どのコースに投げた方が効果的なんですか」っていうことをずっとお聞きしたりということをオフはやってます。
森本:ピッチャーはバッターが対応してくるものに対して、先回りして変わり続けなきゃいけないっていうのは思うんですけど、そういうのを意識してるんですか?それともただ面白くてやってるんですか?
平良:ただ面白くてやってるというのはありますね。ちゃんと結果につながってるって言うところが面白いところだなと思います。
神事:僕がそこで仕事してたら、平良さんが一人でRapsodoをセットして、黙々と投げ続け、あの様は本当に楽しいひとときなんだろうなと思って。自分のやりたいことがちゃんとできたときの喜びみたいな、すごい大事だなと思いますね。
次回「先発で挑む23年シーズンの目標とは!?」
今回は、平良投手とピッチングにおけるデータについて対談した。データを活用することで、従来の常識を覆す新たな発見を見出したりと、平良投手のデータと野球観の関連性について語って頂いた。中編では、2023年シーズンの目標について伺っていく。
Baseball Geeks編集部