【プロ野球】少数精鋭の広島と多くの打者にチャンスを与える日本ハム!ファーム打者の出場機会の平等性を分析
ドラフト会議が来週に迫っている。ドラフトにおける戦略が各球団で異なるように、獲得した選手にどう出場機会を与えるかも球団によって異なるだろう。1年間の総試合数は限られているため、期待株の選手に出場機会を集中させるのか、多くの選手に出場機会を分散させるのか、球団はそのバランスを決めねばならない。各球団のファームはどのような選手起用をしているのか、今回は主に経済学で利用されるジニ係数(不均等指数)という指標を使って検討する。
参考:【プロ野球】前半戦振り返り打者編!侍戦士が多くランクイン!
各球団のジニ係数:トップの広島。パ・リーグ勢は値が小さい
本記事では、2軍打者の打席数の偏りについてジニ係数の計算を行う。この数値は0に近いほど出場機会が平等であることを、1に近いほど出場機会が不均等であることを意味する。ジニ係数は均等さを計測する指標で、主に経済学で所得格差やエネルギーの偏在を評価するために用いられる。0から1の数値を取り、1に近いほど偏りが多い状況であることを示す。今回は打席数を資源にみたて、各球団のジニ係数を比較することで選手起用の特色について分析を行った。
まず、12球団ファームの近年のジニ係数を示す(図1)
2016年からの6シーズンの平均。2021年は10月6日時点のデータ、以下の表についても同様。
12球団ファームの中でも、広島が抜きん出て高いジニ係数を示した。広島は少数の選手に多くの打席を割り当てているということだ。丸佳浩、鈴木誠也、小園海斗を代表に、絶えず生え抜きの強打者が生まれる要因として、少数精鋭の育成システムがあるのかもしれない。
一方、ジニ係数が低い6球団のうち、5球団はパ・リーグのチームであった。パ・リーグの1軍にはDH制が採用されており、セ・リーグよりも1名多く打者が必要となる。そのため、2軍の公式戦でも多くの打者が出場機会をもらえている可能性が考えられる。
少数精鋭に切り替え中のDeNA
続いて、近年にジニ係数に変化があった球団をとりあげる。まずは、ジニ係数が急増中のDeNAだ(図2)。
DeNAのファームは2017年以降ジニ係数が増加傾向である。2017年は日本シリーズに出場したものの、ソフトバンクに惜しくも敗れたシーズンであった。日本一を目指すにあたって、特定の選手に出場機会を集中させる育成法に切り替えた可能性が考えられる。
タレント探しを急ぐ日本ハム
一方、近年ジニ係数が下がった球団として日本ハムがあげられる(図3)。日本ハムはもとからジニ係数が低い球団であったが、ここ2年は0.4程度の数値となり、12球団で1番小さい値となっている。
日本ハムは2019年以降Aクラスから遠ざかり、今シーズンも最下位にいる期間が長くなっている。多くの選手に出番をあたえることで、大きく飛躍する選手が見つかる可能性を少しでもあげ、下位脱出への糸口を探しているのかもしれない。
隔年で起用方針がかわるオリックス
最後に、特徴的な推移をしているチームとしてオリックスをとりあげる(図4)。オリックスはここ数年、ジニ係数が高い年と低いの年が交互に続いている。もしこれが意図的であるならば、2年単位で育成のサイクルを回していることになる。宗佑磨や杉本裕太郎はジニ係数が高い年に特に出場機会を得ていた打者である。今季の優勝争いの背景には緻密な育成戦略があるのかもしれない。
ジニ係数と選手育成
本記事では偏りをあらわすジニ係数を用いることで、2軍の打者の出場傾向について分析をした。少数精鋭の広島や、多士済々のパ・リーグとチームごとに色がでる結果となった。近年は2軍の結果を掲載するメディアも増えてきている。今後、2軍の結果を見る際には、選手起用のバランスに注目するのも面白いだろう。
Baseball Geeks編集部