吉田正尚選手への提言「三振をしろ!」とは
今年も日本人選手が野球界の最高峰「メジャーリーグ」で戦っている。メジャーが開幕してから約2ヶ月となるが、今シーズンは日本人選手の活躍が目覚ましい。
その中で今回は、三振しない男・吉田正尚選手について様々なデータを分析し、ネクストベースからの提言を行っていく。
打撃復調の秘密
森本:まずは、吉田選手のここまでの成績ですけれども、シーズン序盤は打率一割台まで落ち込んでしまいました。4月18日までは絶不調、4月18日までと4月20日からを比較してもらうと、打率も急上昇しているんですが、打球を見てみるとすごく特徴的なデータが出ております。打球速度、打球角度そして引っ張りの角度を見ると、打球の速度が約10キロアップ。打球の角度が約10度アップ。 引っ張りの角度も5〜6度ぐらいアップという事で、全てアップしています。バッティングのメカニズム的なところでいうとどんなことが吉田選手に起きたんですかね。
打球の違い
神事:打球の角度からまず見てみると、少しバットの角度そのものが変わっている可能性があります。アッパースイング局面でのボールのコンタクトっていうのができるようになってきたんだと思います。更に言うと、この打球の方向も引っ張り方向になったというところ。バットって逆方向に流し打ちをしようとするとバットを加速させる時間が短くなりますので、その分だけ打球速度が速くならない。引っ張り方向になり、かつ打球の角度が上がるようになったため、結果的にこの打球の速度も上がるようになったということだと思います。今までだと、どちらかというとちょっと差し込まれ気味だったのが、少しだけ前で捉えるようになった。そしてバットを加速させる時間が長くなり、かつ(バットとボールの当たる)角度がダウン局面からアッパー局面でのコンタクトになり、引っ張りが増え、結果的に長打も増えてきたということになるんだと思います。
高めへの対応
森本:なぜ差し込まれ気味だったのかというところは、どのように推察されていますか?
神事:1つはやっぱり球速。日本よりも(メジャーの)ピッチャーが投げるボールの速度は5キロぐらい速いです。かつメジャーリーグですとやっぱ高めでのストライクっていうことを取られますので。となった時に、バッターとしては高めの速い真っすぐっていうところでどうしてもそこに対してアジャストできないということが発生してきたんだと思います。
森本:レッドソックスのルイ・オルティス打撃コーチもですね、高めのストレートというところを1つキーワードとしておっしゃっていまして、高めのストレートに力が入りすぎてゴロを打ってしまうことが続いていた。少しフォームを微修正したというようなコメントもありますように高めのストレートに慣れてきて対応できるようになったという所ですかね。
参考:大谷翔平の今シーズンを大予想!【最終回:ストレート学】
“三振しない男”はMLBでも健在
森本:実は苦しんでいた4月18日以前でも、三振自体はめちゃくちゃ少なかったんですよね。
神事:これも驚異の“全然三振しない人“ですね。
森本:ただし、50%、半分がゴロになってしまっていたという結果、ホームランや長打は非常に少なかったというところでしたが、実は4月20日以降でいうと三振は増えています。
神事:三振しないというところが彼の特徴でしたが、三振をするようになって、結果的に長打も増えていったということがあると思います。1度、吉田選手とお食事させてもらったことがあって、その時何食べたんでしたっけ?なんかでも地鶏でしたね。
森本:カウンターで貸切でしたね。
神事:そう、カウンターで藤木直人さんと吉田正尚さんがいて神事努がいるっていう謎の光景でしたね。そのとき吉田選手が言っていたのが、全部のタイトルを取りたい。打率も取りたいし、ホームラン王も取りたい。結果的に何が発生するかというとやっぱり当てに行くっていうことが発生してしまうということが懸念としてありました。彼がそういう意味ではこの4月18日前で打率を落としたところでいうとやっぱりボールを当てるということにフォーカスしすぎていたんじゃないかなと思います。
長打と三振の関係性
神事:データを見てみると長打の多い選手っていうのは特徴としては三振が多いというところですが、見ていただくとジャッジ選手は34%の確率で三振(と内野フライ)することが明らかになっています。しかしながら外野フライやライナーが多くて、かつ、ホームランも多い。大谷翔平選手も吉田選手よりは三振はしているということになります。打球を上げようと思うとボールに対してバットを下に入れなきゃいけないということが発生してしまう。そうするとちょっとミスすれば空振りで、良ければホームランや長打が出るというような、このバットとボールの関係を見るとやはり三振と長打というのは比較的近いところにあると。一方で、吉田選手の場合はコンタクトというところを意識してしまうと良ければ長打、悪いとゴロというような形になってしまう。ですから長打を増やすという意味では三振を恐れずに振っていくということと、打球に角度をつけていくということの2つを目指してほしいなというふうに思います。
ネクストベースから吉田正尚選手への提言
森本:じゃあ今回も改めて神事さんから吉田選手に提言をいただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
神事:三振をもっとして良い!三振をしろ!あのー、、、ファンの方からすると、いやいやいやいやいやって思われるかもしれませんが、結果的にそれによって長打が増えていく、そしてレッドソックス内での立ち位置っていうのはもっともっと上がっていくと思います。1回三振する、2回三振するというところで見てる方からするとドキドキしますけど、そもそも非常に三振が少ないバッターですので、もう少し三振してもいいから振っていこうというのが僕からの勝手な提言ということになります。
森本:じゃあ、何打席連続無三振とかそういう報道がだめってことですね?
神事:116球ぶりに空振りをしたっていうのが報道されるってことは、僕なんかバッティングセンターに行くと必ず1回目空振りから入りますけど、三振しないっていう過熱報道ぶりはちょっとあれですね。
森本:ある種、メディアさんへの提言ですね。吉田選手の活躍を楽しみにしております!次回は、メジャー1年目にチャレンジしている千賀滉大投手をお送りいたします!
Baseball Geeks編集部