2020年の山口俊の投球を分析!データからみえた特徴的な投球術とは!
昨年、スプリングトレーニングの中断や試合数の減少など、異例のシーズンの中でメジャーデビューを果たした山口俊。新天地トロント・ブルージェイズでは、コンディション調整もままならない状況の中で、中継ぎとして2勝をマークした。今回は、メジャー1年目の登板からみえた課題や、今シーズン先発奪取を果たすためのポイントをトラッキングデータから分析していく。
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代名詞のスプリットは球速比の高さが特徴!
はじめに、各球種の平均球速と投球割合をみていく(表1)。最も投球割合が高い4シームをはじめ、全ての球種で球速がメジャー平均を下回っている。今シーズンは短いイニングでの登板がメインだったこともあり、メジャー平均に満たない球速は大きな改善点といえるだろう。
カッコ内はメジャー平均
しかし、ヤンキースの田中将大や同じブルージェイズで活躍するリュ・ヒョンジンのように、メジャー平均を下回る球速でも好成績を残している投手もいる。年齢的にも大幅な球速アップは難しいため、球速だけにこだわるのではなく、いわゆる投球術に磨きをかけることも重要かもしれない。
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また、山口の代名詞ともいえるスプリットは球速比が高く、4シームとの球速差が比較的小さいという特徴がある。4シームに次いで投球割合が高いことからも、このボールに対する自信がうかがえる。今後の活躍にも、この高速なスプリットが必要不可欠だろう。
変化の異なるスプリット・スライダーを投げ分ける
続いて、各球種のボール変化量をみていく(図1)。投球の軸である4シームはシュート成分が大きく、球速・球質ともに空振りを奪いにくいボールであることがわかる。やはり山口の投球では、変化球との組み合わせが生命線になってくるだろう。
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スプリットの変化量をみてみると、かなり広範囲にばらついていることがわかる。これはスプリットというひとつの球種の中で、対戦打者や状況に応じて落差が小さなボールと大きなボールを投げ分けている可能性が高い。同様にスライダーも、横曲がりが小さなボールと大きなボールがみられる。このように、同一球種内で変化が異なるボールを投げ分けることができる器用さが、彼の最大の武器と呼べるかもしれない。
また、リスク管理表をみると四死球の割合の高さが目立つ(図2)。プロ野球とは異なるメジャーのボールに苦しんだ部分もあるかもしれないが、完全アウトやゴロといったリスクが低いイベントの割合も高い水準を記録しているだけに、もったいない印象を受ける。各球種をコースに投げ分ける制球力もひとつのポイントとなりそうだ。
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今シーズンは先発奪取を果たせるか!
今回はメジャー1年目の山口の投球を分析した。新天地がカナダを本拠地としているため、開幕前には周囲に家族や友人もいない状況で、入国すらできなかった。メジャー1年目にして、日本人選手の中で最も過酷な環境を経験したといえるだろう。今シーズンは、本来の姿はもちろんのこと、さらに進化をした投球をみせてくれることに期待したい。
Geeksウェビナー開催のお知らせ!
次回のGeeksウェビナーに山口俊投手の出演が決定。
ウェビナーでは自身のピッチングスタイルや投球戦略、そして勝負球であるスプリットについても語ってもらう。また、スポーツ科学者の神事努とトップアナリストの森本崚太とともに、その魔球ともいえる球質の正体を探っていく。また、本記事へのコメントや質問の一部をウェビナーの中で紹介予定となっている。詳細はBaseball Geeks内のウェビナーページをチェック。
Baseball Geeks 編集部