MLB2017年打者ランキング~怪物ジャッジの打球速度は?~
MLBではポストシーズンも、ついにワールドシリーズを残すのみとなりました。
以前、投手の4シームのトラッキングデータランキングを紹介しましたが、今回は打球速度を中心に、打者のトラッキングデータをランキング形式で紹介し、MLB2017年シーズンを振り返っていきたいと思います。
参考:【MLB】2017年投手ランキング~球速1位は?注目のカーショウは?
打球速度は飛距離と強い相関!
ランキングを発表する前に、打球速度で何がわかるのかという話をしたいと思います。
【図1】は、今シーズンのファールを除く全打球を打球速度1km/hごとに平均飛距離を算出したものです。
図1をみると、打球速度が上がれば上がるほど、平均打球飛距離は大きくなっています。
飛距離が大きくなれば長打も増えます。長打が増えるとOPSは高まり、得点への貢献が上がります。
つまり、打球速度は打者の長打を放つ能力を測る指標の一つとなるのです。
そこで今回は打球速度にフォーカスした分析を行っていきます。
新星ジャッジが席巻
今シーズンのファールを除く全打球約13万球から、打球速度ランキングを算出しました【表1】。
順位 | 日付 | 名前 | 打球速度 (km/h) | 打球角度 (°) | 飛距離 (m) | 結果 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 10/1 | G. スタントン (マーリンズ) | 196.7 | -3.9 | 7.9 | 単打 |
2 | 6/10 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 194.9 | 24.6 | 116.4 | ホームラン |
3 | 6/8 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 192.8 | 3.1 | 35.7 | 単打 |
4 | 4/28 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 192.2 | 16.5 | 132.6 | ホームラン |
5 | 5/5 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 191.5 | 7.9 | 69.2 | 2塁打 |
1~5位は、スタントン選手とジャッジ選手で占められていました。
両選手は、今シーズンの両リーグのホームラン王であり、今シーズンを象徴する打者です。
ランキングを100位までみてみると、なんとスタントン選手が25球、ジャッジ選手が26球を占めており、二人で半数以上を占めていました。
これは、この二人の打者の長打を放つ能力は、MLBでも極めて優れているといえるでしょう。
次に今シーズンの平均打球速度ランキングを見てみます。
ここではジャッジ選手が唯一の150km/h越えを果たし、1位となりました【表2】。
順位 | 名前 | 打球速度 (km/h) |
---|---|---|
1 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 152.7 |
2 | N. クルーズ (マリナーズ) | 149.9 |
3 | J. ギャロ (レンジャーズ) | 149.9 |
4 | M. サノ (ツインズ) | 148.7 |
5 | K. デービス (アスレチックス) | 148.5 |
参考 | G. スタントン (マーリンズ) | 147.9 |
打球速度ランキングが「最大」の能力をみるものだとするならば、平均打球速度は「安定」してその速度を出し続ける能力といえます。スタントン選手は、最大の速度を出す能力は最も高かったものの、平均打球速度は6位に留まり、安定して速度を出す能力はジャッジ選手に軍配が上がりました。
ヤンキースのホープ2人が150m弾
次に今シーズンの打球飛距離ランキングを見てみます。
飛距離でもジャッジ選手は健在で、1位と4位にランクインしました【表3】。
順位 | 日付 | 名前 | 打球速度 (km/h) | 打球角度 (°) | 飛距離 (m) | 結果 |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 6/11 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 190.9 | 28.4 | 150.9 | ホームラン |
2 | 8/22 | G. サンチェス (ヤンキース) | 182.0 | 28.7 | 150.3 | ホームラン |
3 | 9/17 | J. ギャロ (レンジャーズ) | 187.0 | 25.7 | 149.4 | ホームラン |
4 | 9/30 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 190.4 | 25.7 | 147.5 | ホームラン |
5 | 6/20 | K. バルガス (ツインズ) | 183.6 | 24.6 | 147.2 | ホームラン |
今シーズン59本の本塁打を放ち、打球速度の速い打球が多かったスタントン選手がランク外という意外な結果でした。飛距離は打球速度だけでなく、打球角度も重要です。スタントン選手は、フライ打球を打つ能力が低いと予想できます。
そこでフライ+ライナー打球の、平均打球速度ランキングをみてみます。【表4】
順位 | 名前 | 打球速度 (km/h) |
---|---|---|
1 | A. ジャッジ (ヤンキース) | 158.2 |
2 | M. サノ (ツインズ) | 156.3 |
3 | K. デービス (アスレチックス) | 156.0 |
4 | N. クルーズ (マリナーズ) | 155.3 |
5 | J. ギャロ (レンジャーズ) | 155.0 |
参考 | G. スタントン (マーリンズ) | 154.6 |
参考 | G. サンチェス (ヤンキース) | 149.9 |
順位に変動はあったものの、5位までの顔ぶれは平均打球速度と同じでした。
以前のコラムでも紹介しましたが、ゴロと比べて、ライナーやフライは長打になる確率が非常に高いため、フライ+ライナーの打球速度は、打球速度よりもさらに長打を放つ能力を測る指標として有用でしょう。
サンチェス選手のように、平均の速度はまだ低いものの飛距離ランキングに入った選手は、最大の能力が高く、今後楽しみな存在といえるかもしれません。
参考:「打者」大谷翔平の打球データを分析!数字が示す驚異の能力と今後の課題とは!?
打者の能力を適切に読み取る
打球速度は打者の能力を測るうえでの一つの指標になります。
しかし、空振りは対象としていないため、打球速度だけではコンタクト能力を評価することができません。さらには打球の種類や、今回触れることのできなかった打球方向を組み合わせて、適切に打者の評価を行う必要があるでしょう。
先日、マーリンズをグループで買収した元ヤンキースのジーター氏は、スタントン選手の放出を示唆しました。
メデイアサイトFANGRAPHSによると、マーリンズはMLB30球団の中でGB/FBが最低で、ゴロの多いチームでした。
フライを打つ意識が低いチームの中にあって後半戦に本塁打を量産したスタントン選手は、もしフライ打球に取り組むチームに移籍した暁には、さらに本塁打を量産するかもしれません。
「フライボールレボリューション」は2017年を象徴する言葉でした。
トラッキングデータによって適切な評価や指導が広がれば、さらに打者はレベルアップしていくでしょう。
来シーズンもさらなる「革命」に期待しましょう!
参考:MLBで波紋!今年のボールは飛ぶのか!?加速するフライボールレボリューション
Baseball Geeks編集部