MLB2017年投手ランキング~球速1位は?注目のカーショウは?
MLBではポストシーズンもいよいよ優勝決定シリーズ、そしてワールドシリーズを残すのみとなりました。
白熱した試合が続く中で今回は、2017年レギュラーシーズン投手トラックマンデータランキングと題して、4シームに関連するデータをランキング形式で紹介したいと思います。
やはりこの投手!他の投手を圧倒する球速
まず、2017年シーズン(以下今シーズン)の4シームの全投球から、球速ランキングを示しました【表1】。
トラッキングデータでなぜ球速?と思うかもしれません。球速を測定するツールとして馴染みがあるのは、スピードガンでしょう。
しかしスピードガンは設置している場所によって測定地点が変化してしまうのに対し、トラックマンでは、リリース直後の本当の初速を測定することができるのです。
そのため、どの球場でも公平に比較を行うことができるのです。
順位 | 日付 | 名前 | 球速(km/h) |
---|---|---|---|
1 | 9/1 | A. チャップマン (ヤンキース) | 167.7 |
2 | 9/1 | A. チャップマン (ヤンキース) | 167.0 |
3 | 9/30 | A. チャップマン (ヤンキース) | 166.9 |
4 | 9/18 | A. チャップマン (ヤンキース) | 166.7 |
5 | 9/1 | A. チャップマン (ヤンキース) | 166.7 |
1~5位はすべてヤンキースのチャップマン投手でした。
また、2017年のMLBの4シームの平均球速は150.0km/hでした。
球速160km/hを超える4シームはチャップマン投手の代名詞ですが、今シーズンは投球した4シームの半数以上の投球が160km/hを超え、平均球速も160km/hを超えました。
そしてなんと今シーズンの球速ランキング100位までのうち87球をチャップマン投手がマークしました。シーズン序盤から中盤は、故障もあり不調が続いていましたが、圧倒的な球速は健在でした。
それでは次に、今シーズンの平均球速ランキングを見てみます【表2】。
順位 | 名前 | 投球数 | 最高球速 (km/h) | 平均球速 (km/h) |
---|---|---|---|---|
1 | A. チャップマン (ヤンキース) | 671 | 167.7 | 160.9 |
2 | T.ローゼンタール (カージナルス) | 653 | 163.7 | 158.5 |
3 | F. リベロ (パイレーツ) | 691 | 165.1 | 158.3 |
4 | C. キンブレル (レッドソックス) | 787 | 162.9 | 158.2 |
5 | D. ベタンセス (ヤンキース) | 511 | 162.9 | 158.1 |
参考 | ダルビッシュ有 (ドジャース) | 1118 | 158.4 | 151.8 |
参考 | 田中将大 (ヤンキース) | 395 | 156.1 | 148.3 |
2017年に4シームを300球以上投球した投手を対象
やはりここでもチャップマン投手が1位となっています。
また、やはり短いイニングを全力投球できるリリーフ投手が多いことがわかります。
来シーズンのMLB挑戦が報道されている日本ハム大谷投手は、先発投手でありながら平均球速が速いため、非常に高い評価を受けるでしょう。
しかしMLBを見渡すと、惜しくもランク外であったヤンキースセベリーノ投手や、故障により投球数が足りなかったものの、2位に相当する平均球速であったメッツのシンダーガード投手といった、若くて球速の速い先発投手が次々と台頭してきています。
今後もMLBの平均球速はどんどん高まっていくかもしれません。
「ノビ」の正体!?4シームのホップ成分ランキング
最後に、今シーズンの平均ホップ成分のランキングをみてみます【表3】。
ボール変化量とは、ボールに作用した揚力によって、ボールがどのくらい変化したのかを表しています。
重力のみが作用した場合に対して、揚力によってどれくらい上に到達したかがホップ成分となります。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
たとえば、2017年シーズンのボール変化量の平均(シュート成分21.0cm、ホップ成分43.0cm)からみて、「エストラーダ投手の4シームはMLB平均よりも18cm伸びていた。」「カーショウ投手の4シームはMLB平均よりも15cm伸びていて、ほとんどシュートしていない。」のようにみるとわかりやすいかもしれません。
順位 | 名前 | 球数 | シュート成分 (cm) | ホップ成分 (cm) |
---|---|---|---|---|
1 | M. エストラーダ (ブルージェイズ) | 1740 | 14.7 | 60.6 |
2 | C. カーショウ (ドジャース) | 1115 | 1.9 | 57.9 |
3 | R. プレスリー (ツインズ) | 392 | 7.3 | 55.3 |
4 | J. フィールズ (ドジャース) | 703 | 8.6 | 54.6 |
5 | C. ハッチャー (アスレチックス) | 513 | 13.0 | 54.6 |
参考 | 上原浩治 (カブス) | 423 | 34.8 | 53.7 |
参考 | ダルビッシュ有 (ドジャース) | 1118 | 11.7 | 43.9 |
参考 | 田中将大 (ヤンキース) | 395 | 22.2 | 41.0 |
参考 | 2017年平均 | ー | 21.0 | 43.0 |
2017年に4シームを300球以上投球した投手を対象
1位がブルージェイズのエストラーダ投手、2位がドジャースのカーショウ投手となりました。また、上原投手は惜しくも6位でした。
このランキングの中でも、特に際立つのがカーショウ投手です。
ホップ成分が非常に大きいだけでなく、シュート成分が非常に少ないのも特徴です。
打者からすると、思っているよりも上に到達し、「ノビ」ているように感じるだけでなく、ほとんどシュートせずに真っ直ぐ飛んでくる軌道は予測が非常に困難でしょう。
MLB1といっても過言でない成績を残し続ける理由の一つがこの4シームの変化量であるといえるでしょう。
参考:「ダルビッシュ、田中将大、上原浩治のストレートは変化球?」データで分析
トラッキングデータで野球談議を楽しむ
ここまで4シームの様々なトラッキングデータを紹介してきました。
これらのデータは、野球を今までとは違った角度から楽しむツールにもなります。
例えば、とある投手の今シーズンの成績を振り返ったときに、トラッキングデータによってその理由を考察したり、移籍選手や期待の若手の投手の特徴をみてみたり、好きなチームの選手の成長をデータで追いかける、といった具合です。
まだまだ日本ではなじみがないデータも多いと思いますが、トラッキングデータやこのBaseball Geeksが、野球談議の新しいツールになればと思い、様々なデータの楽しみ方を今後も紹介し続けていけたらと思います。
Baseball Geeks編集部