サイ・ヤング賞候補バーランダーを分析!正確無比の制球力で3回目の受賞へ
メジャーリーグ(以下、メジャー)の投手にとって、最も権威のある「サイ・ヤング賞」。今シーズンのサイ・ヤング賞は、日本時間11月17日に発表される。最多勝(18勝)と最優秀防御率(防御率1.75)のタイトルを獲得したジャスティン・バーランダー(アストロズ)がサイ・ヤング賞の最有力候補として名前が挙がっている。そこで今回は、今シーズンのトラッキングデータからバーランダーの投球を分析していく。
手術前の投球スタイルが復活
はじめに、バーランダーの球速と投球割合をみていく(表1)。
バーランダーの持ち球は4シーム、スライダー、カーブ、チェンジアップの4球種である。4シームの球速はメジャー平均よりも高速で、最高球速は159.9キロを記録した。159キロを記録したのは約4年ぶりであり、衰えを感じさせないどころか、160キロに迫る驚異的な投球をみせている。
投球割合をみると、4シームとスライダーの2球種で8割近くを占めており、これらが投球の中心になっていることがわかる。また、他の球種の投球割合をみても、2度目のサイ・ヤング賞を受賞した2019年シーズンとほぼ同じ投球割合だ。手術前の投球スタイルを完全に取り戻しているといえるだろう。
参考:【MLB最速投手ランキング】サイヤング賞バーランダーの順位は?
続いて、各球種のボール変化量をみていく(図1)。
4シームはメジャー平均よりもかなりホップ成分が高く、いわゆる「ノビ」のあるボールだといえる。さらに先述の通り、球速が速いこともあり空振りを奪いやすいボールである。スライダーは高速に大きく変化するボールであり、空振りだけでなくゴロにも打ち取りやすい球質であるといえる。また、カーブはドロップ成分が大きく、スライダーと同様に空振りを奪いやすいボールとなっている。
参考:【2021年】メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
安定感抜群の制球力
ここで、リスク管理表をみてみよう(図2)。
完全アウトの割合はメジャー平均を大きく上回っており、四死球割合はメジャー平均よりも非常に低い。他の候補者であるアレク・マノアやディラン・シーズと比較しても、群を抜いて失点リスクの低い投球ができている。この優秀なリスク管理能力が、今シーズン18勝4敗・勝率8割越え・防御率1点台といった圧倒的な成績につながっているといえる。
参考:奪三振の重要性とは!勝てる投手のリスク管理能力を分析
最後にバーランダーの武器であるスライダーの到達位置をみてみる(図3・4)。
投じたスライダーのほとんどが右打者の外角低めに制球されている。また、空振りを奪っているスライダーは外角低めギリギリに投球されている。スライダーを徹底して同じコースに投球し続けたことが、高い完全アウト率を記録した要因であるといえるだろう。
参考:【開幕直前】2021年の投手大谷翔平を分析!カギは投球コース?
3度目のサイ・ヤング賞受賞なるか
ここまで、今シーズンのバーランダーの投球をみてきた。バーランダーは、今シーズン39歳と大ベテランの選手であり、2020年にはトミー・ジョン手術も経験した。しかし、今シーズンの投球はメジャートップクラスの球速に加え、抜群の制球力で安定感溢れる投球を披露している。怪我から復活した衰え知らずの右腕は3度目の受賞を手にすることが出来るのだろうか。
- ジャスティン・バーランダー
Justin Brooks Verlander
1983年2月20日生まれ 右投右打
デトロイト・タイガース(2005-2017)ーヒューストンアストロズ(2017ー)
【MLB通算】482試合、244勝133敗、防御率3.24
【受賞歴】サイ・ヤング賞(2011、2019)、MVP(2011)、新人王(2006)、最多勝利(2009、2011、2019、2022)、最優秀防御率(2011、2022)、最多奪三振(2009、2011、2012、2016、2018)
Baseball Geeks編集部