大谷翔平の今季初登板をデータで分析!新しいスライダーで奪三振の山を築く
現地時間4月7日、大谷翔平は「1番・投手兼DH」として先発出場。打者としては無安打に終わったものの、投手としては5回途中1失点9奪三振と三振の山を築き上げた。最速161キロの4シームと、昨シーズンから球質が変化したスライダーとカーブを交えてアストロズ打線を手玉に取った。
本記事ではトラッキングデータを用いて、今季初登板と昨シーズンからの変化を振り返っていく。
参考:【開幕直前】2021年の投手大谷翔平を分析!カギは投球コース?
どの球種も昨シーズンより球速アップ!
はじめに、各球種の平均球速と投球割合をみていく(表1)。4シームは平均160キロ近い球速で、投球の半分近くを占めている。特筆すべきは、どの球種も昨シーズンの平均に比べて速くなっている点だ(表2)。初登板ということもあるが、昨シーズンより更にパワーアップしている可能性も考えられる。今後の登板にも注目だ。
カッコ内は2021年のメジャー平均
カット系の4シームと曲がりを抑えたスライダー
続いて、各球種のボール変化量をみていく(図1)。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
目を引くのはカット系の4シームだ。元々シュート成分が小さいことが大谷の4シームの特徴だが、昨シーズンよりもシュート成分がさらに小さくなっている。それどころか、一部スライドしているボールもあり、左打者にとっては食い込んでくるように感じられるだろう。
メジャー平均に比べて横に曲がるブーメラン系のスライダーも特徴的である。ただし、昨シーズンと比較するとスライド成分が小さくなっている。スタイルチェンジをした可能性、または2種類のスライダーを投げ分けている可能性があるといえる。大きく曲がるスライダーは特に右打者から空振りを取りやすい球種であり、右打者が6人並ぶアストロズには効果的であったと考えられる。
参考:サイ・ヤング賞受賞なるか!ダルビッシュ有の大躍進の秘訣に迫る!
スプリットで空振りを奪えず。課題は制球か!?
最後に、球種別の空振り率(空振り/投球数)を見ていく。一試合のみのデータであるので、あくまで参考にみてもらいたい。
スライダーは投球の約3割が空振りになっており、昨シーズンに比べて空振りが奪えていた。球速や変化量が変わった影響で、打者が見極めづらいボールになった可能性が考えられる。
一方、スプリットは13球投球して1球も空振りを奪えなかった。各球種の到達位置を見ると(図2)、スプリットはストライクゾーンの左右に外れることが多くなっている。スプリットをストライクゾーン低めに集め、空振りを増やすことが、次回以降の登板にむけた課題といえるだろう。
シーズン中の調整にも注目
今回は、開幕戦に「1番・投手兼DH」として出場した大谷翔平の投球を分析した。昨シーズンから変化したスライダーを武器に奪三振の山を築いたこと、一方でスプリットでは思うように空振りが奪えなかったことがわかった。
今シーズンはスプリングトレーニングが短くなった影響もあり、多くのピッチャーが調整をしながらの登板となっている。本記事で触れたスライダーやスプリットも次回以降の登板でさらに改良されるかもしれない。今シーズンも記憶と記録に残る活躍をするのか注目だ。
Baseball Geeks編集部