ドジャース前田健太投手快投の鍵は「落ちる」チェンジアップ
今シーズン、2年ぶりの二桁勝利を挙げたドジャースの前田健太投手(以下、前田投手)だが、ポストシーズンではリリーフで起用されている。その準備として、9月からはブルペンでの登板を続けており、昨年同様目覚ましい活躍を見せている。
また、その投球内容を詳しく分析してみると、昨シーズンから大幅に変わっている点も明らかとなった。今回は、昨シーズンと今シーズンの前田投手の登板を分析し、ポストシーズンでの活躍の鍵を握るポイントを探っていきたい。
前田健太投手の新たな武器となった「チェンジアップ」
まず、前田投手が昨シーズンと今シーズンにどんなボールで打者を打ち取ったかを見ていく。
球種 | ゴロ率 | 空振り率 |
---|---|---|
4シーム | 12% (13%) | 18% (18%) |
2シーム | 18% (25%) | 18% (13%) |
スライダー | 9% (15%) | 40% (34%) |
チェンジアップ | 21% (20%) | 34%
(30%) |
カーブ | 21% (17%) | 28% (31%) |
かっこ内は2018年メジャー平均
上記の表を見ると、近年の前田投手はチェンジアップとスライダーが特に高い空振り率を誇っており、効果的なボールであることが伺える。
4シームの「ノビ」の減少も、チェンジアップがカバー
次に、各球種の変化量を見ていく。前田投手のスライダーは、メジャー平均(図中灰丸)と比べてホップ成分が大きく、真横に滑るような変化であることが分かる。
また、チェンジアップはメジャー平均よりも落差が大きいことも特徴といえる。この変化球の特異性が前田投手の特徴といえるだろう。
では、この球質は昨シーズンと比べるとどんな変化が起こっていたのだろうか。速球とチェンジアップに着目してみる。
4シームの縦変化量は年々落ち、いわゆる「ノビない速球」となっている。2019年にはメジャー平均をも下回ってしまった。ただし、同時にチェンジアップは年々縦変化量が落ち、より落差の大きなボールになっている。4シームの「ノビ」は減少しても毎年安定した成績をキープしているのは、新たにチェンジアップという武器を磨いたからだと言えそうだ。
参考:前田健太2017年分析 ~飛躍のポイントは4シームのホップ成分?~
前田投手がリリーフで活躍できる理由
リリーフに回り活躍を見せている前田投手だが、続いては先発時とリリーフ時の成績を比較してみたい。2018年と2019年のポストシーズンも含めた成績を見てみる。
K%(2018) | BB%(2018) | K%(2019) | BB%(2019) | |
---|---|---|---|---|
先発 | 27.7% | 8.7% | 26.2% | 8.4% |
リリーフ | 35.1% | 4.1% | 35.5% | 6.5% |
成績は2019年9月26日時点
各年において、四球率を減らしながら三振率を大幅に向上させており、リリーフに回ると一段階上のレベルの投手になっている。特にK%の35.5%という数値は、ヤンキースのチャップマン投手の36.2%に匹敵している。また、BB%で比較するとチャップマン投手が10.8%であるのに対し前田投手は6.5%に抑えており、リリーフ時の前田投手の高い支配力が伺える。
先発とリリーフで投球割合はどう変化したか
また、先発からリリーフとなり大きな違いがあったのが各球種の投球割合である。昨シーズンと今シーズンで、先発とリリーフでの各球種の投球割合の変化を示した。
共にリリーフではカーブの投球割合を減らし、4シーム・チェンジアップ・スライダーのほぼ3球種で勝負していた。リリーフと先発の違いを考察した以前のコラムでは、リリーフ投手は先発投手より操る球種が少なく、空振り割合の高い球種で勝負している傾向にあった。同様に前田投手も勝負球をどんどん投げ込んでいるといえよう。
参考:「先発タイプ」ってどんな投手?持ち球からその適性を考える
その中で昨シーズンと今シーズンで異なる点は、4シームの投球割合である。先述したように、今シーズンの前田投手は、4シームとチェンジアップの縦変化量がともに落ちている。このため、4シームよりもチェンジアップやスライダーに自信を持つようになり、投球割合に現れていると言えるかもしれない。
ドジャースの世界一奪還の立役者となるか
昨シーズンと今シーズンでは、リリーフでの投球内容に大きな違いのあった前田投手だが、ハイレベルな成績を残しているのは変わりがない。自分の置かれた役割や自分の投げているボールの球質の変化に対応してピッチングスタイルを柔軟に変更できる器用さを持った投手と言えるのではないだろうか。世界一奪還に燃える前田投手の投球から目が離せない。
Baseball Geeks編集部