Dバックス平野佳寿を分析!最大の武器であるスプリットの特徴とは?
早くもチームに欠かせない存在になりつつある。
今シーズンメジャーリーグに挑戦したダイヤモンドバックス平野佳寿投手(以下、敬称略)は、ここまで10試合に登板し防御率1.93と抜群の成績をおさめている(4/23現在)。メジャーリーグ挑戦によって、平野の投球したボールの詳細なデータが取得できるようになった。今回はそのトラックマンデータを使い、平野の投球の秘密に迫っていきたい。
球速も持ち球の数も平均以下…!?
まずは平野の各球種の球速と投球割合をみていこう。
持ち球はなんと4シームとスプリットの2球種のみであった(表1)。
球種 | 平均球速 (km/h) | 投球割合 (%) |
---|---|---|
4シーム | 147 (150) | 54 |
スプリット | 134 (136) | 46 |
カッコ内はメジャーリーグ平均
平均球速はメジャーリーグ平均を下回り、球速で勝負するタイプではない。
また、持ち球も2球種と非常に少なく、多彩な変化球で打ち取るタイプでもなかった。
参考:「先発タイプ」ってなに?持ち球からその適性を考える
平野は球速も持ち球の数もメジャーリーグ平均を下回る。ではなぜここまで好成績を残せているのか。
ここからは平野がどのようなボールを投球しているのかをみていこう。
大きな落差のスプリットが最大の武器!!
平野の各球種の回転数とボール変化量をみていく。4シームはメジャーリーグ平均とほぼ同じような球質だった(表2)。
参考:メジャーリーガーが投げる平均的なボールって?
球種 | 回転数 (rpm) | 縦変化 (cm) | 横変化 (cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2215 (2255) | 43 (43) | 23 (22) |
スプリット | 1201 (1513) | 5 (17) | 20 (30) |
カッコ内はメジャーリーグ平均
一方スプリットは、回転数が少なく落差の大きなボールだ。
一般的なスプリットは、4シームよりもシュート成分が大きく「シュートしながら沈む」ボールだが、平野のスプリットはシュート成分が4シームとほぼ同じだ。打者は「真縦に沈む」ように感じるボールで、途中まで見分けがつきにくいボールだろう(図1)。
また、変化量をみると田中将大や大谷翔平のように一部のボールが原点(0cm)よりも下にプロットされている。一般的なスプリットは4シームのようにバックスピンで投球されており、原点よりも上に到達する。原点よりも下に変化をみせるトップスピンのかかったスプリットは、ごく限られた投手しか投球できない「現代の魔球」なのだ。
参考:田中将大2017年分析 ~0.2%の魔球~
4シームと見分けがつきにくく、さらには平均を大きく上回る落差。平野はこのスプリットを武器に活躍をみせていたのだ。
そもそもスプリットは打たれにくい…?
平野はスプリットを武器にここまで活躍をみせている。最後にこのスプリットに関するデータを紹介したい。
スプリットを武器にしている日本人投手が多いため意外なイメージかもしれないが、実はスプリットはメジャーリーグ全体でも2%程度しか投球されていないボールなのだ。
参考:真っ向勝負は時代遅れ?球種別のイベントの特徴
また、上記コラムで紹介しているように、スプリットは平均打球飛距離が最も小さい球種で、空振り割合も4シームの約2倍となっていた。つまり、スプリットは「リスクを抑えやすい球種」だったのだ。
今後も平野が高い精度でスプリットを投球し続けることができれば、打者は打ち崩すのが困難だろう。
しかし、注意しなければならないボールは4シームだ。平野の4シームは球速が平均以下で、球質もほぼメジャー平均と同じだ。4シームのみに的を絞られると打ち取るのが難しいだろう。空振りを狙うだけでなく、カウントを稼いだりゴロで打ち取るようなスプリットの使い方をしていくことで、今後も安定した活躍ができるかもしれない。
このように、トラックマンデータが取得できるようになったことで「有効な球種とその使い方」がわかるようになった。
今後もBaseball Geeksではデータを使った「新しい野球の見方」を提供していきたい。
Baseball Geeks編集部