大谷翔平デビュー戦の全球種をデータで分析!武器は球速160キロの速球だけにあらず!?
4月2日初登板、6回3失点。エンゼルス大谷翔平はメジャー初登板初勝利という結果で投手デビューを果たした。
メジャーリーグでは測定機器トラックマンを使い、球速や回転数、ボールの変化の大きさといったデータを計測している。
今回はそれらのデータから、Baseball Geeks編集部が見つけた大谷の意外な秘密について紹介していきたい。
4シームの球速はメジャーリーグ屈指
大谷の代名詞と言えばスピードボールだ。デビュー戦でも平均球速は157キロを記録した(表1)。
先発としてはメジャーリーグでも屈指のスピードで、今後も大谷最大の武器となるだろう。
球種 | 平均球速 (km/h) | 平均球速 (%) | 最高球速 (km/h) |
---|---|---|---|
4シーム | 157 (150) | 100 (100) | 160 |
スプリット | 144 (136) | 91 (91) | 146 |
スライダー | 132 (136) | 84 (91) | 137 |
カーブ | 121 (126) | 77 (84) | 122 |
カッコ内はメジャーリーグ平均
一方で、課題は変化球の球速にある。
平均球速(%)は、どれくらい4シームに近い球速かを示す。スライダーは84%と4シームとの球速差が大きい。遅く曲がる変化球は打者は反応しやすく、打ち損じを狙いにくくなってしまう。
4シーム以外に武器あり…?
トラックマンでは、ボールの変化量を計測できる。回転数だけではボールがどのように変化したかはわからないが、ボール変化量だと「○○cmシュートした」のように、客観的に球質を表現できる。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴
ではこのデータを使って大谷の球質をみていこう。
球種 | 回転数 (rpm) | 縦変化 (cm) | 横変化 (cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2219 (2255) | 39 (43) | 21 (22) |
スプリット | 1445 (1513) | 3 (17) | 18 (30) |
スライダー | 2391 (2362) | 5 (9) | -38 (-12) |
カーブ | 2479 (2489) | -44 (-19) | -30 (-22) |
カッコ内はメジャーリーグ平均
大谷の4シームをみるとメジャーリーグ平均よりも回転数が低く、ホップ成分の小さなボールとなっている。いわゆる「伸び」を感じにくいボールで、空振りは奪いにくい球質だ。
意外にも特徴的なのはスプリットとスライダーだ。実際にデビュー戦で三振を奪ったのもすべてその2球種だった。デビュー戦での全投球をプロットし、メジャーリーグ平均(薄色の黒丸)と比較してみる。
スプリットは大きく沈む変化だ。メジャーリーグ平均よりも落ちているだけでなく、一部のボールが原点(0cm)よりも下にプロットされている。原点よりも下に変化をみせるということは、トップスピンのかかったボールとなる。
一般的なスプリットは4シームのようにバックスピンで投球されており、このトップスピンのスプリットは田中将大をはじめとしたごく限られた投手しか投球できない「現代の魔球」なのだ。
参考:田中将大2017年分析 ~0.2%の魔球~
スライダーはメジャーリーグ平均と比較しても非常に大きく横に変化するボールだ。しかしながら、先述したように球速がやや遅い。球速を高めることができれば武器となるボールかもしれない。
大谷活躍のカギを握るのは!?
では最後に、大谷分析のポイントを整理しつつ活躍のカギを探っていきたい。
大谷最大の特徴は160キロに迫る4シームの球速だ。メジャーでも屈指の球速は威力を発揮するだろう。しかしながら大谷の4シームの変化をみると、いわゆる「伸び」が小さく空振りが奪いにくい球質だ。球速が落ちてきてしまった時には、長打を浴びる危険性をもつボールといえるかもしれない。
一般的には大谷といえばスピードボールをイメージするかもしれないが、意外な武器は変化球にある。特に高速に大きく沈むスプリットは、空振りを奪いやすく今後も決め球となるだろう。
スライダーは横変化こそ非常に大きいものの球速が遅い。打者が対策しやすいボールであるため、変化を抑えてでも高速化することを狙うべきかもしれない。
初登板でいきなり結果を出した大谷だが、まだまだ進化するポテンシャルを秘めている。「世界一の才能」から今後も目が離せない。
【動画】大谷が初登板で奪った9つの三振の勝負球はいずれも変化球だった
Baseball Geeks編集部