元巨人マイコラスをデータで分析!最大の武器はスライダーの制球力!
ここまでの活躍を予想した人は少ないのではないだろうか。
今シーズンからメジャー復帰を果たしたマイコラス(カージナルス所属)は、ここまで6連勝を含む7勝をマークしている(6/19現在)。
活躍の秘密はなにか、そして来日前のメジャー時代は通算4勝しか挙げられなかったマイコラスは巨人での3年間でどう変わったのか。今シーズンのトラックマンデータをもとに解説していこう。
日本時代を経て4シームの球速がアップ!
まずはマイコラスの各球種の球速と投球割合をみていく。全球種で平均を上回る球速をマークした(表1)。
球種 | 平均球速 (km/h) | 平均球速 (%) | 投球割合 (%) |
---|---|---|---|
4シーム | 152 (150) | 100 (100) | 31 |
2シーム | 151 (148) | 99 (99) | 16 |
スライダー | 141 (136) | 93 (91) | 23 |
チェンジアップ | 144 (135) | 95 (90) | 8 |
カーブ | 126 (126) | 83 (84) | 21 |
カッコ内はメジャーリーグ平均。
4シームの平均球速は先発ながら平均を上回る152キロだった。これは日本に来る直前の2014年のデータ(平均球速150キロ)をも上回る球速だった。4シームは球速が高まると、空振りが増加し長打のリスクも下がる。マイコラスは日本時代を経て球速が高まり、4シームだけでなく他の球種の威力も増したのだ。
武器のスライダーは意外にも並な変化?
では次に、マイコラスが投球するボールの球質をみてみよう。各球種のボール変化量をメジャーリーグの平均値(薄黒丸)と比較した(図1)。
4シームはホップ成分、シュート成分ともに小さい球質だ。空振りを量産するような球質ではないが、手元でカット気味に変化するように感じるボールだ。2シーム、チェンジアップは速球に近い球速でシュートしながら沈むため、ゴロを打たせたい場面で有効なボールだろう。
また、ここまで最も威力を発揮しているのがスライダーだ。空振り割合、ゴロ割合ともに自身の球種の中で最も高かった(表2)。
球種 | 空振り割合 (%) | ゴロ割合 (%) |
---|---|---|
4シーム | 16% | 41% |
2シーム | 6% | 57% |
スライダー | 27% | 62% |
チェンジアップ | 13% | 52% |
カーブ | 24% | 58% |
マイコラスのスライダーの変化量は平均的だ。しかしながら球速が速く、球種の判断が難しい。さらに、ほとんどの投球が右打者の外角(左打者の内角)に制球されている(図2)。
スライダーは元々空振りを奪いやすい球種であり、マイコラスも高速なスライダーで空振りを量産している。
参考:真っ向勝負は時代遅れ?球種別のイベントの特徴!
さらに、右打者の外角低め・左打者の内角低めに投球される右投手のスライダーは、打者がより変化を感じやすいボールだ。マイコラスのスライダーは変化量こそ特筆していないが、徹底して効果的なコースに投球し、打者を打ち取っているのだ。
参考:「外角低めって本当に安全?」トラックマンデータで徹底分析
マイコラスは日本時代を経て、四死球を劇的に減らした。球速の向上に加え、スライダーをはじめピンポイントへの制球力を高めたことが活躍の大きな要因だったのだ。
マイコラスの活躍はどこまで続く??
マイコラスはメジャー復帰後7勝2敗(6/19現在)と大活躍をみせている。この活躍はどこまで続くのだろうか。
マイコラスの武器は各球種の球速の高さとスライダーの制球力だ。両武器とも日本時代を経て大きくレベルアップを果たした。
一方、マイコラスの速球は空振りを奪いやすい球質ではなく、球速が遅くなってしまうと危険なボールとなる。日程の厳しい夏場に突入するが、球速をキープする事ができるかが大きなカギとなるだろう。
日本人投手の相次ぐ離脱で日本のメジャーリーグファンも寂しい状況となっている。日本からメジャーにわたった一人の「サムライ」としてマイコラスを応援していきたい。
Baseball Geeks編集部