大会MVP受賞の米国代表スターター(ストローマン編)
今回はWBC2017アメリカ代表として活躍をみせたマーカス・ストローマン投手(以下ストローマン投手)について分析します。
身長173cmとメジャーリーガーとしては小柄ながらも、ゴロを打たせて取るピッチングスタイルを武器に、スターターとして活躍するストローマン投手の投球術を探っていきたいと思います。
ストローマン投手のプロフィール
アメリカ合衆国ニューヨーク州サフォーク郡メドフォード出身のメジャーリーガー。安定感が武器の先発右腕です。現在は、MLBのトロント・ブルージェイズに所属しています。WBC2017年では、決勝戦で快投をみせ、見事大会MVPに輝きました。
投球結果の割合
メジャーリーグ屈指のゴロピッチャー!
ストローマン投手の成績で注目すべきは2シームのゴロ割合です。メジャーリーグ平均を大きく超える成績を残しており、2シームを武器にゴロの山を築いている投手であることがわかります。【表1】
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 40% (46%) | 26% (19%) | 26% (36%) | 29% (28%) | 29% (27%) |
2シーム | 45% (44%) | 12% (13%) | 66% (56%) | 21% (24%) | 11% (16%) |
カットボール | 49% (50%) | 22% (23%) | 55% (46%) | 22% (25%) | 16% (22%) |
スライダー | 54% (49%) | 32% (36%) | 67% (46%) | 16% (25%) | 15% (21%) |
カーブ | 41% (40%) | 41% (32%) | 50% (51%) | 24% (24%) | 21% (20%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
2シームが投球の中心!
ストローマン投手は6つの球種を持っています。6つの球種の平均球速はすべてMLB平均に近く、特徴がないことがわかります。【表2、3】
2シームは対左右打者ともに40%以上の高い割合で投球しています。前述したように、2シームは高いゴロ割合を残しており、ストローマン投手は2シームを主体にピッチングを組み立てていることがわかります。
平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) | |
---|---|---|---|---|
4シーム | 150 (149) | 100 (100) | 154 (154) | 15 |
2シーム | 150 (149) | 100 (100) | 154 (153) | 46 |
カットボール | 145 (143) | 96 (96) | 152 (149) | 17 |
スライダー | 138 (136) | 92 (91) | 145 (144) | 10 |
チェンジアップ | 137 (137) | 91 (92) | 143 (144) | 5 |
カーブ | 130 (125) | 87 (84) | 138 (135) | 8 |
カッコ内はMLB平均
平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) | |
---|---|---|---|---|
4シーム | 150 (149) | 100 (100) | 154 (154) | 10 |
2シーム | 149 (149) | 99 (100) | 153 (153) | 42 |
カットボール | 145 (143) | 97 (96) | 152 (149) | 22 |
スライダー | 137 (136) | 91 (91) | 145 (144) | 12 |
チェンジアップ | 137 (137) | 91 (92) | 143 (144) | 5 |
カーブ | 132 (125) | 88 (84) | 139 (135) | 8 |
カッコ内はMLB平均
球種毎のボールの変化量とリリースポイント
ゴロを生み出す小さいホップ成分!!
ストローマン投手の投球の変化量をみると、高いゴロ割合を生み出す要因をみてとることが出来ます。【図1、2】【表4,5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
※薄色は各球種のMLB平均
- 4シーム
シュートが少なく、沈むボールであることがわかります。
- 2シーム
MLB平均と比べて大きく沈んでいることがわかります。また、シュートはやや少ないボールとなっています。
- カットボール
高速で、MLB平均のスライダーに近い変化をするボールです。
- スライダー
横の変化、縦の変化共に大きく変化しています。
- チェンジアップ
MLB平均とほぼ同じ変化量です。
- カーブ
横の変化が大きなボールです。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2247 (2253) | 36 (45) | 17 (23) |
2シーム | 2236 (2159) | 18 (34) | 29 (38) |
カットボール | 1579 (2275) | 11 (32) | -4 (2) |
スライダー | 1859 (2264) | -5 (13) | -20 (-5) |
チェンジアップ | 1438 (1787) | 26 (26) | 34 (34) |
カーブ | 2540 (2413) | -8 (-15) | -34 (-17) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2313 (2253) | 37 (45) | 16 (23) |
2シーム | 2225 (2159) | 18 (34) | 30 (38) |
カットボール | 2037 (2275) | 16 (32) | -4 (2) |
スライダー | 1639 (2264) | -6 (13) | -16 (-5) |
チェンジアップ | 1808 (1787) | 28 (26) | 32 (34) |
カーブ | 2442 (2413) | -5 (-15) | -30 (-17) |
カッコ内はMLB平均
球種ごとに分析すると、投球割合の多い4球種(4シーム、2シーム、カットボール、スライダー)は大きく沈む変化をすることがわかります。
さらに【表6、7】をみると、リリース高は非常に低いことがわかります。またエクステンションも短く、非常にコンパクトなフォームから投球されていると推察されます。
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 164 (180) | 32 (50) | 180 (188) |
2シーム | 163 (178) | 33 (54) | 180 (187) |
カットボール | 164 (181) | 35 (51) | 175 (184) |
スライダー | 165 (181) | 36 (56) | 171 (178) |
チェンジアップ | 164 (179) | 27 (54) | 175 (188) |
カーブ | 168 (187) | 35 (53) | 167 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 165 (180) | 35 (50) | 180 (188) |
2シーム | 162 (178) | 35 (54) | 180 (187) |
カットボール | 165 (181) | 37 (51) | 175 (184) |
スライダー | 165 (181) | 37 (56) | 170 (178) |
チェンジアップ | 163 (179) | 27 (54) | 176 (188) |
カーブ | 169 (187) | 37 (53) | 167 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウント、ゾーンからみた特徴
徹底された低めのコントロール!
ストローマン投手の特徴は徹底した低めへの投球です。投球割合の高い4球種を、球種別にみていきましょう。
- 4シーム
他の球種と比べて比較的に投球されるコースが分散されている傾向にあります。【図3、4】
- 2シーム
最も投球割合の高い2シームですが、主に早いカウントで投球しています。【表12、13】
追い込んだ後は投球割合が低下し、0-2、1-2のカウントではかなり低い割合となります。3-2となると再び上昇することからも、制球に自信を持っていると推察されます。
またゾーンをみると、かなり高い割合で低めに投球されています。【図5、6】
- カットボール
対右打者へは外角低め、対左打者へは内角低めに投球されています。どちらの場合でも投球されるコースが徹底されているのが特徴です。【図7、8】
またボールが先行したカウントではほとんど投球されていません。【図16、17】
- スライダー
カットボールと同様に、対右打者、左打者のどちらの場合でも最も投球されるコースは右打者の外角低め(左打者の内角低め)です。【図9、10】
追い込んでからの投球割合が高く、早いカウントではほとんど投球されていません。【表20、21】
ストローマン投手への対策
カウント別の傾向に注意
ストローマン投手の特徴をおさらいしておきます。最大の武器は、投球の中心となる2シームです。ストローマン投手の2シームは低いリリース高から徹底して低めに投げられていることに加え、大きく沈む事が特徴です。
また変化球においても、徹底的に低めに投球されており、漠然と攻撃してもゴロの山を築かれてしまいます。自分のペースに持ち込むと手が付けられなくなる投手で、決勝戦でも2シームを武器に多くのゴロアウトを奪いました。
一方で、低めの変化球はボールゾーンへの投球も多く、打者に見極められるととても苦しい状況になります。追い込むまでは2シーム、追い込んだ後は変化球が増えることも頭に入れて狙い球を絞りましょう。
ほとんどのボールが沈むため、ローボールヒッターや、アッパースイング気味の選手を起用する事も得策かもしれません。
全てのボールの球速はほぼ平均です。空振りを恐れずフルスイングすることが、ストローマン投手攻略に繋がるでしょう。
- まとめ:ストローマン投手攻略法
- 低め狙いでアッパースイング!
- 変化球のボール球の見極めが勝負の分かれ道!
- 投球割合は追い込むまでは2シーム、追い込んだら変化球!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部