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【番外編】守護神離脱 日本にとって朗報?



目次
ヘンドリックス投手のプロフィール
高いスイング割合!スライダーは「空振りの奪えるボール」!
速球派の神髄!速球系の高い割合に注目
速いだけじゃない!ホップ成分の大きいストレート
高め中心?左打者は高めの4シームに要注意
ヘンドリックス投手への対策

メジャーリーグでも2年連続で活躍し、WBCオーストラリア代表の中でも中心投手になったであろうリアム・ヘンドリックス投手(以下ヘンドリックス投手)。

残念ながらWBC2017年への出場を辞退してしまいました。Baseball Geeksでは早くからヘンドリックス投手の分析を進めていましたのでここでご紹介したいと思います。

ヘンドリックス投手のプロフィール

オーストラリア連邦西オーストラリア州パース出身のメジャーリーガー。右投右打の速球派の投手です。現在はMLBのオークランド・アスレチックスに所属しています。

高いスイング割合!スライダーは「空振りの奪えるボール」!

まず成績をみると、MLB平均と比べて4シーム、2シーム、スライダーのスイング割合が高いことがわかります【表1】。速球を武器に、「思わず振ってしまう」投球をしていることがわかります。

またスライダーの空振り割合はMLB平均を11%も上回っています。スライダーは空振りが奪えるボールといえるでしょう。

表1 各球種のスイング割合、空振り割合と打球の種類
球種スイング割合
(Sw Rate)
空振り割合
(Whf/Sw)
ゴロ割合
(GB/BIP)
ライナー割合
(LD/BIP)
フライ割合
(FB/BIP)
4シーム57%18%36%32%20%
2シーム51%16%52%21%18%
スライダー50%47%59%22%11%
チェンジアップ36%40%0%0%50%
カーブ35%33%40%40%20%

速球派の神髄!速球系の高い割合に注目

まず各球種の球速と投球割合をみていきます【表2、3】。すべての球種でMLB平均を超える球速を示しています。球速の割合をみても、スライダー、チェンジアップは高速な変化球であるといえ、高い空振り割合を支える要因の一つであるでしょう。
 

表2 対右打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム152
(149)
100
(100)
156
(154)
45
2シーム151
(149)
99
(100)
157
(153)
25
スライダー142
(136)
93
(91)
146
(144)
21
チェンジアップ143
(137)
94
(92)
149
(144)
2
カーブ125
(125)
82
(91)
129
(135)
4

カッコ内はMLB平均

表3 対左打者における各球種の球速
球種平均速度(km/h)平均速度(%)最高速度(km/h)投球割合(%)
4シーム152
(149)
100
(100)
156
(154)
36
2シーム152
(149)
100
(100)
157
(153)
47
スライダー142
(136)
93
(91)
145
(144)
8
チェンジアップ141
(137)
92
(92)
144
(144)
3
カーブ126
(125)
83
(91)
131
(135)
6

カッコ内はMLB平均

投球割合をみると4シームと2シームの割合が非常に高く、ヘンドリックス投手の特徴といえるでしょう。この球種の合計は、右打者に関しては70%を超え、左打者には80%を超えています。

右打者にはスライダーを21%投球していますが、左打者にはほぼ4シームと2シームを投球しており、他のボールは合計しても17%にとどまっています。速球を武器とするパワータイプの投手であることがみて取ることが出来ます。

速いだけじゃない!ホップ成分の大きいストレート

次に各球種のボール変化量をみてみましょう【表4、5、図1、2】。カーブ以外のすべての球種においてMLB平均を上回るホップ成分をみせています。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~

特に投球の中心である4シーム、2シームは共に、シュート成分が小さくホップ成分が大きい伸びるボールとなっています。

特に2シームはMLB平均よりも14cm大きいホップ成分を示しており、平均の4シームよりも伸びているボールとなっています。

表4 対右打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2260
(2253)
54
(45)
13
(23)
2シーム2200
(2159)
48
(34)
27
38
スライダー2085
(2264)
21
(13)
-2
(-5)
チェンジアップ2090
(1787)
24
(26)
14
(34)
カーブ1925
(2413)
-18
(-15)
-12
(-17)

カッコ内はMLB平均

表5 対左打者における各球種のスピンレートとボールの変化量
球種スピンレート(rpm)縦の変化量(cm)横の変化量(cm)
4シーム2277
(2253)
53
(45)
14
(23)
2シーム2190
(2159)
45
(34)
29
38
スライダー2114
(2264)
19
(13)
-4
(-5)
チェンジアップ1849
(1787)
28
(26)
28
(34)
カーブ1915
(2413)
-19
(-15)
-10
(-17)

カッコ内はMLB平均

図1 対右打者へのボールの変化量
図2 対左打者へのボールの変化量

※薄色は各球種のMLB平均

リリース位置をみても【表6、7】、エクステンションがMLB平均より長く、打者に近いポイントでリリースされているため、打者はよりスピードを感じるかもしれません。

表6 対右打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム184
(180)
45
(50)
201
(188)
2シーム183
(178)
49
(54)
201
(187)
スライダー185
(181)
48
(56)
202
(178)
チェンジアップ187
(179)
47
(54)
204
(188)
カーブ191
(187)
46
(53)
189
(173)

カッコ内はMLB平均

表7 対左打者における各球種のリリース位置
球種リリース高(cm)リリース横(cm)エクステンション(cm)
4シーム185
(180)
47
(50)
202
(188)
2シーム184
(178)
51
(54)
199
(187)
スライダー184
(181)
49
(56)
204
(178)
チェンジアップ183
(179)
53
(54)
204
(188)
カーブ185
(187)
48
(53)
190
(173)

カッコ内はMLB平均

高め中心?左打者は高めの4シームに要注意

投球の大半が4シームと2シームですが、特に追い込むまではその傾向は顕著で、3ボールになると100%でその2球種のどちらかを投球しています【表8~19、図3~8】。

4シーム

右打者と左打者で、ゾーンが異なるのが大きな特徴です【図3、4】。対右打者は外角低めを中心に投球している一方で、対左打者は高めに多く投球されています。
左打者に対しては追い込んでから4シームを多く投球しています。
どのカウントでも速い球速で投球されていることもわかり【表10、11】、左打者は高めのボール球を振らないよう注意が必要かもしれません。

表8 対右打者へのカウント別投球割合
表9 対左打者へのカウント別投球割合
表10 対右打者へのカウント別球速
表11 対左打者へのカウント別球速
図3 対左打者へのボールの投球割合
図4 対左打者へのボールの投球割合
2シーム

右打者の内角、左打者の外角と決まったゾーンに投球されており、特に左打者に対しては早いカウントでの投球が多いことがわかります【表12、13、図5、6】。
 

表12 対右打者へのカウント別投球割合
表13 対左打者へのカウント別投球割合
表14 対右打者へのカウント別球速
表15 対左打者へのカウント別球速
図5 対左打者へのボールの投球割合
図6 対右打者へのボールの投球割合
スライダー  

右打者へのスライダーは75%が外角低めのボール球に制球されており、高い空振り割合もうなずけます。高速なボールは、80%がボール球なので、追い込まれてもボール球に手を出さないことが重要です。
また、ボールが先行したカウントでほとんど投球されていないため、4シーム、2シームに狙いを絞って良いと考えます。

表16 対右打者へのカウント別投球割合
表17 対左打者へのカウント別投球割合
表18 対右打者へのカウント別球速
表19 対左打者へのカウント別球速
図7 対左打者へのボールの投球割合
図8 対右打者へのボールの投球割合

ヘンドリックス投手への対策

伸びるボールに注意!変化球は捨てる勇気も必要!

ここまでヘンドリックス投手を分析してきましたが、ポイントは4シーム、2シームを打てるかにかかっているといえるでしょう。

ヘンドリックス投手の特徴として4シームと2シームが投球の大半を占めていることが挙げられます。右打者には21%スライダーを投球していますが、そのうち80%がボール球であり、高い空振り率を誇るスライダーを思い切って見送る勇気も必要でしょう。
 

4シーム、2シームは大きなホップ成分を誇ります。しかし両球種の球速はほぼ同じであり、またどのカウントでも速い球速で投球されています。言い換えると、ボールに威力はあるものの、タイミングを合わせるのが難しいボールではないと考えます。

投球されるコースに特徴がみられるため、球種だけでなくコースも含めた狙いを絞っていく事が攻略のカギになるかもしれません。

まとめ:ヘンドリックス投手攻略法
投球の大半は4シームと2シーム。右打者へのスライダーは80%がボール球。
4シームのゾーンは、右打者は外角低め、左打者は高め。
2シームのゾーンは、右打者は内角、左打者は外角。

威力のあるボールを投げ込みますが、来るボールやコースは決まっています。狙いをしっかり定めることで攻略につながるでしょう。

 

ヘンドリックス投手のWBCへの出場辞退は残念でしたが、今シーズンのメジャーリーグでの活躍を大いに期待したいものです!

※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)

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Basball Geeks編集部