オーストラリア代表の分析(サーポルト投手編)
今回はWBC2017にオーストラリア代表として参加しているワーウィック・サーポルト投手(以下サーポルト選手)について分析します。ゴロピッチャーのサーポルト投手の投球術を探っていきたいと思います。
サーポルト投手のプロフィール
オーストラリア連邦パース出身のメジャーリーガー。右投右打の中継ぎ投手です。現在は、MLBのデトロイト・タイガースに所属しています。
ゴロで打ち取るサーポルト投手
サーポルト投手の特徴は高いゴロ割合です。
【表1】をみると、どの球種においても空振り割合はあまり高くありません。一方でゴロ割合はどの球種においても高くなっています。
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 47% | 26% | 50% | 33% | 8% |
2シーム | 62% | 0% | 50% | 33% | 17% |
スライダー | 47% | 24% | 56% | 22% | 22% |
チェンジアップ | 70% | 29% | 50% | 50% | 0% |
カーブ | 46% | 30% | 75% | 0% | 25% |
球種の特徴
投球の中心は4シーム!サーポルトは内に入るボールは投げない??!
サーポルト選手のもう一つの特徴は、左・右の打者によって投げる球種が異なっていることです。【表2、3】
■対右打者
4シーム、カットボール、スライダー、カーブを投げています。
■対左打者
4シーム、チェンジアップ、カーブをメインに投げています。
つまり、右打者にはチェンジアップ、左打者にはスライダーをほとんど投球しない投手であることがわかります。
各球種の球速をみると、4シームは平均球速、最高球速ともにMLB平均とほぼ同様の数値を示しています。一方で、それぞれの変化球はMLB平均よりも速い球速で投球されています。平均球速(%)をみるとスライダーはメジャーリーグ平均より3~4%速くなっており、カーブにおいてもMLB平均より4~5%も速くなっています。
つまり、サーポルト投手のカーブとスライダーは、4シームに近い球速で変化する高速な変化球であるといえます。
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 149 (149) | 100 (100) | 153 (154) | 50 |
カットボール | 142 (143) | 95 (96) | 149 (149) | 8 |
スライダー | 141 (136) | 94 (91) | 143 (144) | 30 |
カーブ | 132 (125) | 88 (84) | 134 (135) | 13 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 150 (149) | 100 (100) | 153 (154) | 65 |
2シーム | 147 (149) | 99 (100) | 147 (153) | 2 |
カットボール | 141 (143) | 95 (96) | 141 (149) | 2 |
スライダー | 143 (136) | 96 (91) | 143 (144) | 2 |
チェンジアップ | 138 (137) | 93 (92) | 141 (144) | 15 |
カーブ | 133 (125) | 89 (84) | 136 (135) | 16 |
カッコ内はMLB平均
球種ごとの変化量の特徴
高速スライダーと高速ドロップでゴロ量産
球種ごとのボールの変化量をみていきます。【図1、2】【表4、5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
※薄色は各球種のMLB平均
- 4シーム
投球の中心である4シームの変化量はMLBの平均値よりもホップ成分(縦の変化量)が4cm大きくなっています。また、シュート成分(横の変化量)も9cm大きく、シュート傾向が強いのが特徴です。
- スライダー
右打者へ多投するスライダーですが、変化量をみると変化の小さなスライダーといえるでしょう。MLB平均値よりもホップ成分が大きく、横への変化も小さくなっています。
球速が94%と高速であるスライダーは、変化が小さく、空振りを奪う事よりもゴロを打たせるボールとなっており、56%と高い値を示したゴロ割合に繋がっていると予想されます。
- カーブ
カーブの変化量は平均値よりもスライド成分が少なく、ドロップ成分(縦の変化量)が7cm大きくなっています。このカーブも高速な変化球であることから、鋭く縦に落ち、結果的にゴロを量産している球種となっています。
- チェンジアップ
左打者に投球するチェンジアップの変化量は、MLB平均値よりもシュート成分が12cmも大きく、逃げていくような軌道になっています。
特徴的な球種といえますが、シュートの変化が大きいことが、右打者に投球していない理由の一つとなっているかもしれません。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2187 (2253) | 49 (45) | 32 (23) |
カットボール | 1975 (2275) | 34 (32) | 5 (2) |
スライダー | 2091 (2264) | 26 (13) | 1 (-5) |
カーブ | 2278 (2413) | -22 (-15) | -9 (-17) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2207 (2253) | 47 (45) | 33 (23) |
2シーム | 2051 (2159) | 43 (34) | 36 (38) |
カットボール | 2312 (2275) | 38 (32) | 3 (2) |
スライダー | 2348 (2264) | 18 (13) | -14 (-5) |
チェンジアップ | 2166 (1787) | 33 (26) | 46 (34) |
カーブ | 2440 (2413) | -20 (-15) | -5 (-17) |
カッコ内はMLB平均
投球ゾーン別に見る特徴
狙うはアウトコース
サ―ポルト投手は基本的に制球が良いタイプではありません。投球ゾーン別の投球割合をみると全体的に外角を中心な投球をみせており、基本的には打者の内角に変化してくるボール(右打者に対してのチェンジアップ、左打者に対してのスライダー)を投球していません。細かい制球よりも、ボールの威力で勝負するタイプのようです。
- 4シーム
カウント別の投球割合をみると、右打者においてボール球が先行した場合は4シームの割合が急激に上昇します。外角中心とはいえ、甘いベルト付近への投球も少なくなく、狙い目といえるかもしれません。その逆で左打者においてはストライクが先行した場合に多く投げられる球種となっています。
- カットボール
対右打者に多く投げられているカットボールはアウトコース高めの割合が多くなっています。
- スライダー
2ストライク時には投球しておらず、早めのカウントで使う傾向があります。投球ゾーンは半分以上アウトコース低めとなっています。
- チェンジアップ
大きく逃げていくような軌道が特徴のチェンジアップは、ゾーンを見ると、アウトコースの高めと低めに多い傾向が見て取れます。チェンジアップは左打者にのみ投球されています。
- カーブ
右打者には0-2の時に100%と特徴的な投球をしています。ゾーンを見ると、左のアウトコース低めに投げている傾向が見て取れます。
サーポルト投手は右打者には追い込んだら4シームまたはカーブでアウトコースに投げてくる投球が特徴的です。
サーポルト投手への対策
ボールに合わせにいかず、フルスイング!
対右打者はスライダー、対左打者はチェンジアップという球種割合の変化にあらわれているように、内角を攻めるボールは少なく、外角の4シームと外に逃げるボールを中心に組み立てているといえます。
対左右打者何れも投球割合の多くは4シームで、制球も良いタイプではありません。甘いゾーンは狙ってフルスイングを心掛けて良いでしょう。
スライダーやカーブは高速に変化する球質であるため、低めに来た場合無理に手を出さずに甘いボールを待つことが得策といえるでしょう。
ボール球が先行した場合にはほとんどの割合で4シームが投球されることからも、難しいコースを合わせにいかず、甘い4シームを待ってフルスイング!が攻略のカギといえるでしょう!
- まとめ:サーポルト投手攻略法
- 合わせにいかず、フルスイング!
日本代表のWBC1次ラウンド突破に向けて、チームを勢いづけるような長打を期待しています!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部