アメリカ代表の分析(ミラー投手編)
今回は、アメリカ代表のセットアッパーであるアンドリュー・ミラー投手(以下ミラー投手)を分析します。日本代表に対して過去のWBCにおいても数々の熱戦を繰り広げてきたアメリカ代表です。接戦に必ず登板する切り札を打ち砕き、勝利をたぐり寄せましょう。
ミラー投手のプロフィール
アメリカ合衆国フロリダ州アラチュア郡ゲインズビル出身のメジャーリーガー。左投げの救援投手です。現在はクリーブランド・インディアンスに所属しています。
球界最高クラスのリリーバーであり、2016年シーズンは自身キャリアハイの成績を残し、優勝の大きな原動力となりました。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
スライダーはメジャー最高クラス!
【表1】のスライダーの成績をみると、空振り割合とゴロ割合はメジャーリーグ平均を大きく上回っています。スライダーはミラー投手の最大の武器といえます。
4シームの成績をみると、空振り割合が低い一方で、高いゴロ割合を記録しています。4シームはカウントを整え、ゴロを打たせるボールであることがわかります。
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 37% (46%) | 12% (19%) | 53% (36%) | 18% (28%) | 26% (27%) |
スライダー | 52% (49%) | 48% (36%) | 58% (46%) | 18% (25%) | 18% (21%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
投球割合に注目!わかっていても打てないスライダー!
ミラー投手の投球割合をみると、2シームはほとんど投球されず、4シームとスライダーの2球種で勝負しています。特にスライダーの投球割合は圧倒的です。
中継ぎ投手で長いイニングは投球しないとはいえ、”わかっていても打てないスライダー”は、ミラー投手の最大の武器といえます。【表2、3】
各球種の球速をみると、4シームはメジャーリーグ平均より速い球速を記録しています。スライダーは平均球速(%)で平均を下回っており、4シームとの比較でやや低速であると言えます。
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 153 (149) | 99 (100) | 160 (154) | 37 |
2シーム | 155 (149) | 100 (100) | 160 (153) | 5 |
スライダー | 136 (136) | 88 (91) | 143 (144) | 58 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 152 (149) | 98 (100) | 157 (154) | 28 |
2シーム | 154 (149) | 99 (100) | 156 (153) | 3 |
スライダー | 136 (136) | 88 (91) | 153 (144) | 69 |
カッコ内はMLB平均
球種毎の変化量
驚異の変化量!唯一無二の切り札!
ミラー投手のスライダーは、なぜわかっていても打てないのでしょうか。その最大の秘密は変化量にありました。球種ごとに細かくみていきたいと思います。なお、この後は4シーム、スライダーの2球種に絞って分析していきます。【図1、2】【表4、5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
※薄色は各球種のMLB平均
左投手のため左右反転表示
- 4シーム
ホップ成分はメジャーリーグ平均と同様ですが、シュート成分が強く、打者からすると伸びながらシュートするボールに感じます。
- スライダー
ミラー投手のスライダーは異質ともいえる変化量です。まず縦の変化量ですが、メジャーリーグ平均と比べて14cm大きく沈んでいます。横の変化量は12cm大きく曲がっています。
また、前述した通り4シームはシュートするため、打者からみるとスライダーにより変化を感じるでしょう。
この変化の大きさが最大の秘密であり、ミラー投手の大きな武器です。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2088 (2253) | 45 (45) | -30 (-23) |
スライダー | 2587 (2264) | -1 (13) | 17 (5) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2099 (2253) | 44 (45) | -32 (-23) |
スライダー | 2577 (2264) | 0 (13) | 16 (5) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
最強左腕にスキ発見!?リリース位置に変化
続いてリリース位置をみると、4シームを投球する際のリリース高はメジャーリーグ平均とほぼ同様ですが、スライダーを投球する時にやや低く遠い位置から投球しています。
大きな変化量を実現するために少し横振りの腕の使い方をしていると推察されます。
ミラー投手の投球の中心はスライダーですので、先ほどの情報の言い方を変えると、4シームを投球する際にミラー投手はやや上から投球するとも言えます。ミラー投手を攻略するうえで数少ないヒントになるかもしれません。【表6、7】
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 179 (180) | -55 (50) | 212 (188) |
スライダー | 172 (181) | -66 (56) | 196 (178) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 176 (180) | -58 (50) | 210 (188) |
スライダー | 171 (181) | -66 (56) | 197 (178) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウントとゾーンからみた特徴
スライダーの精度はかなりハイレベル!4シームはカウントボール
カウントとゾーン別の投球割合を球種ごとにみていきます。
- 4シーム
早いカウントとボール先行した時に投球しています。【表8、9】
ゾーンはややアバウトで、甘いコースにも多く投球されています。【図3、4】
- スライダー
どのカウントでも多く投球されていますが、特に追い込んだ後は高い確率でスライダーを投球しています。【表12、13】
さらに、右打者の内角低め(左打者の外角低め)のボールゾーンに高い確率で投球されており、精度の高さを感じます。【図5、6】
ミラー投手への対策
頼むぞ右打者!フォームの違いを逃さず一発長打を!
ここまでミラー投手の分析を行ってきましたが、球種がわかっていても、メジャー屈指のサウスポーの決め球を打つのは容易ではありません。
特に左打者は、大きな曲がりに加えて高い精度で制球されるため、お手上げといっても良いでしょう。左打者は数少ない4シームだけを待つしかありません。そうなると、ミラー投手攻略のポイントは右打者といっても良いでしょう。
4シームは主に早いカウントとボール先行カウントで投球されます。スライダーは見逃せばボールになる球も多いため、早いカウントではひたすら甘いゾーンだけに的を絞る事が良いかもしれません。
打者有利なカウントに持ち込めば、4シームでカウントを整える場面が出てきます。そこで逃さず一発長打が打てるよう高い集中力で打席に臨みましょう。
さらに、ミラー投手は4シームを投球する際にやや上から投球することが多いようです。あくまで傾向ですが、頭に入れて打席に臨むだけでも、少し余裕をもって打撃が出来るかもしれません。
- まとめ:ミラー投手対策法
- ポイントは右打者!
- 早いカウントで来る4シームを好球必打!
- 甘いコースだけを待つ我慢が必要。
- 球種で投球フォームに違いがでる可能性あり。
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部