アメリカ代表の分析(ダフィー投手編)
- 目次
- ダフィー投手のプロフィール
- 投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
- 球種毎の投球割合と球速差
- 球種毎の変化量
- 球種毎のリリースポイント
- 球種毎のカウントとゾーンからみた特徴
- ダフィー投手への対策
今回はWBC2017年にはアメリカ代表として参加しているダニー・ダフィー投手(以下ダフィー投手)について分析します。先発投手としてはメジャー屈指の速球派であるダフィー投手の投球術を探っていきたいと思います。
ダフィー投手のプロフィール
アメリカ合衆国カリフォルニア州ゴリータ出身のメジャーリーガー。左投げの先発投手です。現在はMLBのカンザスシティ・ロイヤルズに所属しています。WBC2017年でも先発を任されるなど、中心投手としてアメリカ代表の躍進に貢献しています。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
典型的なフライボールピッチャー!
【表1】をみると、ダフィー投手の2つの特徴を読み取ることが出来ます。1つ目の特徴は空振り割合の高さです。空振り割合は、すべての球種でメジャーリーグ平均を大きく越えています。
2つ目はフライ割合の高さで、すべての球種でメジャーリーグ平均を越えています。ゴロ割合が低く、いわゆるフライボールピッチャーであることがみてとれます。
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 54% (46%) | 23% (19%) | 31% (36%) | 25% (28%) | 37% (27%) |
2シーム | 50% (44%) | 16% (13%) | 29% (56%) | 25% (24%) | 36% (16%) |
チェンジアップ | 52% (54%) | 38% (33%) | 47% (50%) | 18% (24%) | 29% (20%) |
カーブ | 45% (40%) | 37% (32%) | 47% (51%) | 23% (24%) | 24% (20%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
速球中心の投球でねじ伏せる
【表2、3】を見ると、すべての球種の平均球速がメジャーリーグ平均を上回っています。球速の速さはダフィー投手の武器であり、高い空振り割合に繋がっているといえます。また、投球割合は対右打者と対左打者で大きく異なっています。
■対右打者
4シームが中心となっていますが、2シーム、チェンジアップ、カーブをバランスよく投球しています。
■対左打者
4シームが6割を占めています。チェンジアップはほとんど投球されず、4シーム、2シーム、カーブを投球しています。
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 153 (149) | 100 (100) | 159 (154) | 36 |
2シーム | 152 (149) | 100 (100) | 157 (153) | 21 |
チェンジアップ | 137 (137) | 90 (92) | 150 (144) | 20 |
カーブ | 134 (125) | 88 (84) | 141 (135) | 23 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 153 (149) | 100 (100) | 159 (154) | 60 |
2シーム | 152 (149) | 100 (100) | 155 (153) | 13 |
チェンジアップ | 139 (137) | 91 (92) | 148 (144) | 3 |
カーブ | 135 (125) | 89 (84) | 157 (135) | 24 |
カッコ内はMLB平均
球種毎の変化量
最大の武器はボールの伸び!
ダフィー投手は高い空振り割合とフライボールピッチャーであることを述べましたが、この理由はボールの変化量で説明できます。すべての球種で、ホップ成分がメジャーリーグ平均を上回っています。球種ごとにみていきましょう。【図1、2】【表4、5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
- 4シーム
メジャーリーグ平均と比べて、ホップ成分が11cmも大きくなっています。ホップ成分が大きいボールは、打者が思っている軌道よりも、上に到達するボールです。
ですから、ボールがバットの上を通過してしまうことで、空振りになってしまいます。
また、ボールにバットが当たったとしても、バットの上っ面にボールが衝突することになり、フライになってしまいます。
- 2シーム
ホップ成分は非常に大きく、メジャーリーグ平均の4シームよりも伸びているボールであることがわかります。
- チェンジアップ
シュートが強いボールといえます。メジャーリーグ平均と比べて横の変化が大きく、縦の変化は小さいボールです。
- カーブ
変化が小さなボールです。球速が速く、打者からみると小さく鋭く曲がるように感じるボールです。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2204 (2253) | 56 (45) | -23 (-23) |
2シーム | 2166 (2159) | 47 (34) | -37 (-38) |
チェンジアップ | 2495 (1787) | 39 (26) | -45 (-34) |
カーブ | 1704 (2413) | 3 (-15) | 9 (17) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2214 (2253) | 58 (45) | -21 (-23) |
2シーム | 2219 (2259) | 49 (34) | -37 (-38) |
チェンジアップ | 2523 (1787) | 43 (26) | -43 (-34) |
カーブ | 1626 (2413) | 2 (-15) | 8 (17) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
リリース位置をみると、高さはメジャー平均とほぼ同様です。しかしエクステンションが長く、ダフィー投手の武器である4シームは、打者がスピードを感じるボールかもしれません。【表6、7】
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 177 (180) | -51 (-50) | 206 (188) |
2シーム | 176 (178) | -53 (-54) | 206 (187) |
チェンジアップ | 177 (179) | -53 (-54) | 208 (188) |
カーブ | 178 (187) | -59 (-53) | 193 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 177 (180) | -50 (-50) | 205 (188) |
2シーム | 176 (178) | -49 (-54) | 206 (187) |
チェンジアップ | 176 (179) | -50 (-54) | 210 (188) |
カーブ | 177 (187) | -56 (-53) | 191 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウントとゾーンからみた特徴
続いてカウント別とゾーン別の投球割合を球種ごとにみていきます。
- 4シーム
ゾーンはややばらついていますが、特に右打者の場合、高めに投球するボールが多くなっています。【図3】
ホップ成分の大きいボールを高めに投げることによって、打者はより浮き上がってくるように感じるボールになります。
また、ボールが先行したカウントでは4シームの割合が高くなる傾向があります。
特に対左打者の場合は顕著でカウント3-0、3-1の場合は100%の割合で投球しています。【表8、9】
- 2シーム
右打者には早いカウントでの投球が中心で、カウントを整えるボールとして使っています。【表12】
また、右打者はアウトコースに、左打者は全体的に高め中心に投球されています。【図6、7】
- チェンジアップ
右打者に多く投球しています。また、ボールが先行したカウントではほとんど投球されません。投球されるゾーンはアウトコースが中心です。他の球種と比べてゾーンはまとまっています。【表16、図7】
- カーブ
投手有利なカウントで投球していることがわかります【表20、21】。
また、低めを中心に投球されています。左打者に対しては徹底して外角に投球しています。【図9、10】
ダフィー投手への対策
球質を理解した上で狙いを絞ろう!
ダフィー投手の投球の最大の特徴は、ボールのホップ成分が非常に大きいことです。打者はボールに伸びを感じるため、無造作に打つと、空振りやフライアウトに繋がります。
しかし一方で、フライボールピッチャーは長打を狙えるチャンスでもあります。カウント別の投球割合をみると、打者有利なカウントでは4シーム、2シームを多く投球します。
思い切って速いボールに狙いを絞ることがダフィー投手攻略につながるのではないでしょうか。長打を狙いやすい高めの4シーム、2シームをフルスイングで打ち崩しましょう。
- まとめ:ダフィー投手攻略法
- 4シームはボールの伸びには要注意!
- 左打者は打者有利のカウントで外寄りに来る4シームを逆らわずに打て!
- 右打者は高めに多く集まる4シームを長打に!
- 2シームはあまり落ちない狙い球。甘く入ったら迷わず振りぬけ!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部