オーストラリア代表の分析(モイラン投手編)
- 目次
- モイラン投手のプロフィール
- 驚くべき2シームのゴロ割合!
- 投球割合の90%以上は2シームとスライダー
- 変化量から見た球種の特徴
- 投球フォームの特徴
- カウントによるコース、球種の特徴
- モイラン投手への対策
今回はWBC2017にオーストラリア代表として参加しているベテランのピーター・モイラン投手(以下モイラン投手)について分析し ます。サイドハンドから繰り出される老獪な投球術を様々な角度から考察していきたいと思います。
モイラン投手のプロフィール
オーストラリア連邦西オーストラリア州パース出身のメジャーリーガー。右投右打でサイドスローの中継ぎ投手です。 現在は、MLBのカンザスシティ・ロイヤルズ傘下に所属しています
驚くべき2シームのゴロ割合!
モイラン投手の成績でまず目を引くのが2シームの圧倒的なゴロ割合です【表1】。スライダーの成績はMLB平均と変わらないものの、2シームはMLB平均と比べてゴロ割合が大幅に高い値を示しています。
球種 | スウィング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (LB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
2シーム | 31% | 10% | 74% | 13% | 14% |
スライダー | 50% | 38% | 42% | 26% | 26% |
チェンジアップ | 31% | 25% | 50% | 0% | 50% |
投球割合の90%以上は2シームとスライダー
まず注目すべきは投球割合です。対右打者、対左打者ともに90%以上を2シームとスライダーが占めており、対右打者に至っては99%以上を占めています【表2、3】。
つまり、対右打者にはチェンジアップはほぼ投球していないということになります。球速は3球種すべてでMLB平均を下回っており、スライダーの球速はMLB平均のカーブの球速とほぼ同様です。
球種 | 平均球速(km/h) | 平均球速(%) | 最高球速(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
2シーム | 146 (149) | 100 (100) | 150 (154) | 57 |
スライダー | 127 (136) | 87 (91) | 133 (144) | 42 |
チェンジアップ | 130 (137) | 89 (92) | 131 (144) | 0 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均球速(km/h) | 平均球速(%) | 最高球速(km/h) | 投球割合(%) |
2シーム | 145 (149) | 99 (100) | 150 (154) | 65 |
スライダー | 127 (136) | 87 (91) | 136 (144) | 29 |
チェンジアップ | 137 (137) | 94 (92) | 140 (144) | 6 |
カッコ内はMLB平均
変化量から見た球種の特徴
各球種に大きな変化量
各球種のボール変化量をみてみましょう。これらがモイラン投手の最大の特徴と言っても過言ではありません。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
- 2シーム
最も多く投球していた2シームはMLB平均と比べ、10cmシュート方向に変化し、40cmも沈んでいます。これがモイラン選手の武器であり、高いゴロ割合を実現している大きな要因のひとつでしょう。
- スライダー
MLB平均より右打者の場合、6cmスライドし、13cm落ちています。スライダーも大きくドロップ方向に変化しているにも関わらず、ゴロ割合が高くなっていません【表1】。この要因としては、2シームが大幅に沈んでいるため、相対的に打者はスライダーにあまり縦の変化を感じないのではないでしょうか。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 2057 (2159) | -6 (34) | 48 (38) |
スライダー | 2331 (2264) | 0 (13) | -11 (-5) |
チェンジアップ | 2148 (1787) | -3 (26) | 27 (34) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 2045 (2159) | -5 (34) | 44 (38) |
スライダー | 2256 (2264) | -2 (13) | -11 (-5) |
チェンジアップ | 1852 (1787) | 2 (26) | 32 (34) |
カッコ内はMLB平均
投球フォームの特徴
THE サイドハンド
2シーム、スライダーの大きな横の変化を生み出している要因は、投球フォームにあります。リリース高は低く【表6、7】、リリース横も平均より60cmほど3塁側から投球しています。
つまり、モイラン投手は、サイドハンドから投球していることが分かります。サイドハンド投げの投手は、腕が横に振られるために、ボールの変化は左右になります【図1、2】。
またリリースのエクステンションも短く、打者がもつ印象よりもはやくボールが投球されています。
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 133 (178) | 112 (54) | 164 (187) |
スライダー | 137 (181) | 111 (56) | 157 (178) |
チェンジアップ | 139 (179) | 109 (54) | 158 (188) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 134 (178) | 114 (54) | 163 (187) |
スライダー | 136 (181) | 115 (56) | 155 (178) |
チェンジアップ | 135 (179) | 111 (54) | 157 (188) |
カッコ内はMLB平均
※薄色は各球種のMLB平均
カウントによるコース、球種の特徴
サイドハンドのお手本?外角中心!追い込んだらスライダー!
続いてカウント別の投球割合と、ゾーン別の投球割合をみていきます。数少ない球種で勝負するモイラン投手はカウント毎に傾向があらわれています。
- 2シーム
早いカウントやボール先行した際の投球が中心となっています。3-0(3ボール0ストライク)のカウントでは100%の確率で投球していることをはじめ、2ボールや3ボールではかなり高い確率で2シームを投球しています【表8、9】。
また、低めに制球されており、対左打者においては多くの投球で外角低めに制球されていることがわかります【図3、4】。
- スライダー
投手有利なカウントで多く投球されています。右打者に対しては0-2の際に93%の確率で投球されているなど、追い込んだ後は特に多く投球されています【表12】。
また、スライダーは対左右関わらず外角に投球されており、高水準の制球力をみせているといえるでしょう【図5、6】。
モイラン投手への対策
惑わされるな!狙いを絞ってしっかりアジャスト!!
ここまでモイラン投手を様々な角度から見てきましたが、丁寧な攻撃を心掛けることがモイラン投手攻略につながると考えます。
モイラン投手は投球の90%を2シームとスライダーが占めています。
- 2シーム
・大きな横の変化が最大の武器です。
・球速が遅く、投球されるゾーンは固定されています。
・ボール先行のカウントにおいて高い投球割合で投球されます。
- スライダー
・球速は遅く変化量も特筆すべき点は多くありません。
・サイドの特性や、特徴ある2シームとの兼ね合いで相対的にフライになりやすい可能性があります。
・外角のボール球さえ見極めることが出来れば、ボール自体に脅威を感じる必要はないでしょう。
・追い込んだらスライダーの傾向がみられます。
- まとめ:モイラン投手攻略法
- 投球のほとんどは2シームかスライダー
- 狙い球をどちらか明確に絞ることが得策!
- ボール先行のカウントでは低めを思い切って狙う!(左右3-0、左3-1の時は100%)
- 追い込まれたらスライダーの見極めを。
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
BASEBALL GEEKS編集部