プエルトリコ代表の分析(ディアス投手編)
- 目次
- ディアス投手のプロフィール
- 投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
- 球種毎の投球割合と球速差
- 球種毎の変化量
- 球種毎のリリースポイント
- 球種毎のカウントとゾーンからみる特徴
- ディアス投手への対策
今回は、プエルトリコ代表のクローザーであるエドウィン・ディアス投手(以下ディアス投手)を分析します。プエルトリコ代表は、前回大会では準決勝で日本を破り準優勝に輝きました。今大会でも強豪国を次々と破り、変わらぬ強さをみせ、みごと決勝進出を決めています。
ディアス投手のプロフィール
アメリカ合衆国プエルトリコ自治連邦区ナグアーボ出身のメジャーリーガー。2016年シーズンは、ルーキーイヤーながら高い奪三振率を武器に大活躍をみせ、華々しいデビューを飾りました。WBC2017年ではプエルトリコ代表のクローザーを任されています。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
スライダーは驚異の空振り割合!
スライダーの成績をみると、空振り率がメジャーリーグ平均を大きく上回っています。4シームの空振り割合も高く、奪三振率が高いこともうなずけます。【表1】
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 47% (46%) | 28% (19%) | 47% (36%) | 26% (28%) | 18% (27%) |
スライダー | 61% (49%) | 57% (36%) | 49% (46%) | 29% (25%) | 17% (21%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
特筆すべきは球速の速さ
【表2、表3】をみると、ディアス投手は3つの球種すべてで球速がメジャーリーグ平均を上回っていることがわかります。特に2シームは、平均球速157キロと非常に高速です。
球速の速さは高い奪三振を生む要因とひとつであり、ディアス投手の大きな武器といえます。投球割合をみると、3球種をバランスよく投球していますが、対右打者の時にはスライダーが、対左打者の時には2シームが増えていることが特徴です。
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 155 (149) | 99 (100) | 163 (154) | 28 |
2シーム | 157 (149) | 100 (100) | 163 (153) | 30 |
スライダー | 140 (136) | 89 (91) | 145 (144) | 41 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 156 (149) | 99 (100) | 162 (154) | 30 |
2シーム | 157 (149) | 100 (100) | 163 (153) | 49 |
スライダー | 140 (136) | 89 (91) | 145 (144) | 20 |
カッコ内はMLB平均
球種毎の変化量
低いリリースから繰り出される快速球
高速であるディアス投手のボールですが、変化量にもその特徴をみてとることが出来ます。球種ごとに細かくみていきましょう。【図1、2】【表4、5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
- 4シーム
メジャーリーグ平均と比べて大きくシュートします。
- 2シーム
メジャーリーグ平均と比べてややホップ成分が大きいボールです。4シームとの差はあまり大きくありません。
- スライダー
横の変化は小さく、縦に変化するスライダーといえます。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2203 (2253) | 42 (45) | 32 (23) |
2シーム | 2236 (2159) | 37 (34) | 41 38 |
スライダー | 2255 (2264) | 8 (13) | -1 (-5) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2234 (2253) | 42 (45) | 33 (23) |
2シーム | 2265 (2159) | 38 (34) | 40 38 |
スライダー | 2275 (2264) | 9 (13) | -1 (-5) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
続いてリリース位置をみてみます。最も大きな特徴はリリース高が低いことです。またリリース横も大きく、ややスリークォーター気味のフォームといえます。リリースが低いと打者は強い伸びを感じます。
伸びながらシュートするディアス投手のボールに対して、左打者は伸びながら逃げていくように感じるかもしれません。【表6、7】
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 163 (180) | 61 (50) | 201 (188) |
2シーム | 162 (178) | 62 (54) | 204 (187) |
スライダー | 171 (181) | 61 (56) | 190 (178) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 164 (180) | 61 (50) | 201 (188) |
2シーム | 162 (178) | 63 (54) | 202 (187) |
スライダー | 171 (181) | 64 (56) | 189 (178) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウントとゾーンからみる特徴
腕のライン通りの投球コース
ゾーン別の投球割合をみると、投球されるゾーンに偏りがあります。ディアス投手の投球の多くは、腕の振りに沿ったライン(右打者の内角高めのボールゾーンから外角低めのボールゾーンを結ぶライン)の中に多く投球されています。
このように投球されたボールの位置が直線的になってしまう特徴は、アマチュア野球の投手の多くに認められます。また、このラインは、投球腕の通る線と一致していることも報告されています(Shinya et al. 2016)。
つまり、右投げのオーバーハンド投げであれば右上がりに、左投げであれば左上がりになります。スリークォーター気味の右投げディアス投手においても、この特徴が顕著に出てしまっていることがわかります。
細かな制球よりもボールの威力を意識した投球であるといえるでしょう。さらに細かく球種ごとにみていきます。
- 4シーム
ボールが先行したカウントでカウントを整えるボールとして投球されています。【表8、9】
また左打者に対しては、球質を生かして外角高めに多く投球しています。【図4】
- 2シーム
カウント3-2や2-2においてやや投球割合が下がっています。【表12,13】
またゾーンは前述したように、腕の振りに沿ったゾーンに多く投球されています。【図5、6】
- スライダー
早いカウントではあまり投球せず、追い込んだ後中心の投球といえます。【表16、17】
またゾーンは左打者に対しては、時折甘いコースにも投球されています。【図8】
ディアス投手への対策
低い位置から伸びる快速球を攻略!投球コースを読み切れ!
ディアス投手の分析を行ってきましたが、ルーキーイヤーから活躍する所以をところどころに感じることが出来ます。
ディアス投手のボールは高速です。特に2シームはメジャーでもかなり速いボールです。変化量をみても、伸びながらシュートする軌道の2シームは、リリースの低さも相まってより威力を感じるでしょう。
そこで攻略のカギは制球力にあると考えます。ディアス投手の投球は大半が腕の振りに沿ったラインに投球されます。それ以外のコースにはあまり投球されないため、打者はコースの狙いを絞りやすいでしょう。
ただし、コースが限定できても、ボールの威力はかなりのものです。高めに絞って振り負けない強いスイングを心掛けましょう。
また左打者に対してはスライダーが甘く入る事も少なくありません。やや縦に変化することを頭に入れて打ち返しましょう。
- まとめ:ディアス投手攻略法
- 多くの投球は腕の振りのライン上に投球される。
- 高めの2シームに振り負けるな!
- 左打者は甘いスライダーを逃すな!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部