プエルトリコ代表の分析(サンディアゴ投手編)
- 目次
- サンティアゴ投手のプロフィール
- 投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
- 球種毎の投球割合と球速差
- 球種毎の変化量
- 球種毎のリリースポイント
- カウントとゾーンからみる特徴
- サンティアゴ投手への対策
今回は、WBCプエルトリコ代表のヘクター・サンディアゴ投手(以下サンディアゴ投手)を分析します。日本代表は前回大会でプエルトリコ代表に苦汁をなめさせられました。今大会でも接戦を制し見事決勝へとコマを進めました。
サンティアゴ投手のプロフィール
アメリカ合衆国ニュージャージー州ニューアーク出身のメジャーリーガー。現在はMLBの、ミネソタ・ツインズに所属しています。2016年は初の2桁勝利を挙げた先発左腕です。WBC2017年では、第2先発として大事な試合に登板するジョーカー的役割を任されています。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
典型的なフライボール左腕
【表1】の2シームの成績をみると、フライ割合がメジャーリーグ平均と比べて高くなっていることがわかります。
また、スライダーを除く全球種で、低いゴロ割合をみせており、典型的なフライボールピッチャーであることがわかります。
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
2シーム | 47% (44%) | 20% (13%) | 29% (56%) | 18% (24%) | 36% (16%) |
カットボール | 44% (50%) | 23% (23%) | 39% (46%) | 11% (25%) | 33% (22%) |
スライダー | 39% (49%) | 19% (36%) | 50% (46%) | 31% (25%) | 15% (21%) |
カーブ | 43% (40%) | 20% (32%) | 44% (51%) | 36% (24%) | 15% (20%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
2シームを軸にフライ量産!
【表2、3】をみると、投球の6割以上が2シームとなっています。2シームと言うと、ゴロを打ち取るイメージがありますが、サンティアゴ投手はそうではありません。2シームでフライを量産しています。
さらに、右打者に対しては、2シームとチェンジアップが投球の大半であるのに対し、左打者に対しては、2シームが7割で、残りは変化球をバランス良く投球しています。
また、球速は、全ての球種においてメジャーリーグ平均を下回っており、球速以外の武器で勝負していると推察されます。
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
2シーム | 148 (149) | 100 (100) | 154 (153) | 62 |
カットボール | 138 (143) | 94 (96) | 145 (149) | 4 |
スライダー | 126 (136) | 86 (91) | 134 (144) | 4 |
チェンジアップ | 134 (137) | 91 (92) | 150 (144) | 25 |
カーブ | 119 (125) | 81 (84) | 124 (135) | 4 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
2シーム | 147 (149) | 100 (100) | 154 (153) | 69 |
カットボール | 136 (143) | 92 (96) | 145 (149) | 9 |
スライダー | 129 (136) | 87 (91) | 134 (144) | 9 |
チェンジアップ | 134 (137) | 91 (92) | 140 (144) | 9 |
カーブ | 118 (125) | 80 (84) | 126 (135) | 4 |
カッコ内はMLB平均
球種毎の変化量
大きく伸びる2シームが生命線
【図1、2】をみると変化量にサンティアゴ投手の特徴を見る事ができます。
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
- 2シーム
メジャーリーグ平均と比べて10cmホップ成分が大きく、ノビ系の2シームを投球しています。【表4】サンティアゴ投手の最大の武器で、この伸びる2シームこそがフライを生み出す要因の一つと言えるでしょう。
- カットボール
やや沈むボールと言えます。しかし2シーム同様フライで多く打ち取っています。小さな変化で詰まらせてフライを打ち取る意図で使用していると考えます。
- スライダー
大きく沈むボールです。投球割合の高い2シームの伸びが強いため、より大きな落差を感じるかもしれません。低速であり、空振りよりもゴロを打たせるボールといえます。
- チェンジアップ
ホップ成分が大きなボールです。落ちないチェンジアップで、打者からすると「来ないボール」という印象になるでしょう。また、シュート成分が非常に大きい事も特徴といえます。
- カーブ
縦変化が小さく、あまり沈まないボールです。横の変化はほぼ平均です。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化(cm) | 横の変化(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 2247 (2159) | 26 (16) | -22 (-21) |
カットボール | 2190 (2275) | 9 (15) | -2 (1) |
スライダー | 2190 (2264) | -4 (4) | 7 (6) |
チェンジアップ | 2006 (1787) | 17 (12) | -28 (-18) |
カーブ | 2127 (2413) | -8 (-13) | 11 (12) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化(cm) | 横の変化(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 2240 (2159) | 25 (16) | -23 (-21) |
カットボール | 2188 (2275) | 9 (15) | -1 (1) |
スライダー | 2104 (2264) | 1/strong> (4) | 2 (6) |
チェンジアップ | 1989 (1787) | 16 (12) | -28 (-18) |
カーブ | 2075 (2413) | -7 (-13) | 12 (12) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
短いエクステンションで遠い位置から投球
リリース位置をみると、メジャーリーグ平均よりもエクステンションが短いことがわかります。エクステンションが短いという事は、印象よりも早くリリースされているということです。 また、平均よりも横からリリースしているのに対し、リリースの高さはほぼメジャーリーグ平均です。【表6、7】
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 176 (178) | -73 (-54) | 168 (187) |
カットボール | 178 (181) | -83 (-52) | 159 (184) |
スライダー | 172 (181) | -87 (-56) | 149 (178) |
チェンジアップ | 177 (179) | -83 (-54) | 162 (188) |
カーブ | 185 (187) | -88 (-53) | 146 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
2シーム | 175 (178) | -75 (-54) | 168 (187) |
カットボール | 176 (181) | -85 (-52) | 159 (184) |
スライダー | 177 (181) | -89 (-56) | 152 (178) |
チェンジアップ | 175 (179) | -85 (-54) | 162 (188) |
カーブ | 186 (187) | -85 (-53) | 147 (173) |
カッコ内はMLB平均
カウントとゾーンからみる特徴
2シーム内でも球速差!
- 2シーム
サンティアゴ投手の投球の中心です。どのカウントにおいても多く投球されています。ボール球が先行したカウントではかなり高い割合で投球されています。【表8、10】 また、投球されるゾーンは、右打者に対してはばらついていますが、左打者に対しては、外角に集中しています。また、追い込んだ後は球速が速くなっている事にも注目です。【図3、4】【表9、10】
- カットボール
左打者の早いカウントで主に投球されています。ゾーンは外角低目に投球されています。【表14、図6】
- スライダー
投手有利なカウントで主に投球されています。【表16、18】ストライクゾーンや甘いゾーンにもやや多く投球されていることが特徴です。【図7、8】
- チェンジアップ
右打者に多く投球していますが、早いカウント中心の投球となっています。【表20】
また、シュートが大きい球質を生かして、右打者の外角(左打者の内角)に多く投球しています。【図9、10】
- カーブ
右打者左打者ともにあまり投球していません。投手有利なカウントに限定されています。【表24、26】
また、投球されるゾーンをみるとストライクゾーンにも多く投球されている事がわかります。【図11、12】
サンティアゴ投手への対策
サンティアゴ投手はフライボールピッチャーです。フライボールが多い投手は、被本塁打が多い投手が多く、サンティアゴ投手も例外ではありません。サンティアゴ投手を攻略にあたって長打を打てる打者がカギを握るでしょう。
サンティアゴ投手の武器は伸びる2シームです。投球の大半が2シームであることからも、2シームを攻略する必要があるでしょう。フォームは、エクステンションが短く、フォームのイメージと実際の軌道に少しズレがある事も注意が必要でしょう。
2シームはどのカウントでも投球しますが、2ボール、3ボールとなった場合は更に投球割合が増えます。ボールが先行したカウントでは迷わず狙いましょう。左打者への投球は外角に集中しています。踏みこむ意識を持つのも良いかもしれません。
踏み込み足を強く踏み込むとスイング速度が増加し、長打にも繋がります。フライボールピッチャーのサンティアゴ投手には良い対策かもしれません。変化球は低速かつ変化が大きなボールは多くありません。2シームを狙っていても真ん中に入ってきた変化球は逃さず叩きましょう。
- サンティアゴ投手攻略法
- 伸びる2シームを長打狙い
- 左打者は強い踏み込みを意識
サンティアゴ投手は、被本塁打も多く、特徴さえ整理して打席に向かうことが出来れば、そう怖くないでしょう。前回大会のリベンジに向けて大事な中盤の攻防を制しましょう!
BASEBALL GEEKS編集部