アメリカ代表の分析(アーチャー投手編)
- 目次
- アーチャー投手のプロフィール
- 投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
- 球種毎の投球割合と球速差
- 球種毎のリリースポイント
- 球種毎のリリースポイント
- 球種毎のカウントとゾーンからみる特徴
- アーチャー投手への対策
今回はアメリカ代表の右腕クリス・アーチャー投手(以下アーチャー投手)の分析をします。今大会のアメリカは、最多人数のメジャーリーガーを登録しており優勝最有力候補です。
アーチャー投手のプロフィール
アメリカ合衆国ノースカロライナ州ローリー出身のメジャーリーガー。高い奪三振率を誇り、2016年シーズンでも200を超える奪三振を記録しています。WBC2017年では、アメリカ代表の先発投手として初戦に先発しています。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
全ての球種で高いゴロ割合
【表1】のゴロ割合をみると、すべての球種でメジャーリーグ平均を超えるゴロ割合を記録しています。奪三振が多いだけでなく、ゴロでも打ち取ることの出来る好投手であるといえます。
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 38% (46%) | 21% (19%) | 40% (36%) | 25% (28%) | 28% (27%) |
スライダー | 54% (49%) | 38% (36%) | 51% (46%) | 22% (25%) | 20% (21%) |
チェンジアップ | 46% (54%) | 31% (33%) | 66% (50%) | 18% (24%) | 16% (20%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
球種はすべて高速
【表2、3】に示した通り、アーチャー投手は球種が3球種と先発投手にもかかわらず多くありません。アーチャー投手は少ない球種の中で工夫しながら打者を打ち取っています。
各球種の球速をみると、3球種すべてでメジャーリーグ平均を上回る球速で投球しています。特にスライダーは、平均球速(%)が93%と、高速な変化球です。さらに、投球割合をみると、対右打者と対左打者で違いがあります。
参考:メジャリーガーが投げる平均的なボールって?
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 153 (149) | 100 (100) | 158 (154) | 50 |
スライダー | 143 (136) | 93 (91) | 153 (144) | 45 |
チェンジアップ | 141 (137) | 93 (92) | 147 (144) | 5 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 152 (149) | 100 (100) | 156 (154) | 47 |
スライダー | 143 (136) | 94 (91) | 155 (144) | 36 |
チェンジアップ | 140 (137) | 92 (92) | 147 (144) | 17 |
カッコ内はMLB平均
■対右打者
4シームとスライダーが約半数ずつとなっています。チェンジアップはあまり投球していません。【表2】
■対左打者
4シームを中心に、スライダーとチェンジアップを投球しています。左打者と対戦する場合には、球種が1つ増えていることが分かります。【表3】
球種毎のリリースポイント
フォームの特徴をみると、リリース高が高く、体の近くから投球しています。投げ下ろすようなフォームで、打者はスライダーの変化をより大きく感じるかもしれません。【表6、7】
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2191 (2253) | 53 (45) | 12 (23) |
スライダー | 2314 (2264) | 10 (13) | -14 (-5) |
チェンジアップ | 1812 (1787) | 28 (26) | 30 (34) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2188 (2253) | 51 (45) | 15 (23) |
スライダー | 2323 (2264) | 11 (13) | -13 (-5) |
チェンジアップ | 1810 (1787) | 24 (26) | 30 (34) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
フォームの特徴をみると、リリース高が高く、体の近くから投球しています。投げ下ろすようなフォームで、打者はスライダーの変化をより大きく感じるかもしれません。【表6、7】
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 189 (180) | 34 (50) | 183 (188) |
スライダー | 193 (181) | 35 (56) | 169 (178) |
チェンジアップ | 186 (179) | 37 (54) | 190 (188) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 188 (180) | 41 (50) | 181 (188) |
スライダー | 192 (181) | 43 (56) | 169 (178) |
チェンジアップ | 186 (179) | 45 (54) | 188 (188) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウントとゾーンからみる特徴
4シームは高めに、変化球は低めに
球種が少ないため、カウント別ゾーン別ともに傾向が大きく出ています。
- 4シーム
早いカウント中心に投球しています。3-0のカウントでは100%の確率で投球しています。【表8、9】
また追い込んだ後は、投球割合は下がるものの球速は速くなっており、決めにいくボールは力を込めて投球していることがわかります。【表10、11】
ゾーンは高めが中心ですが、内角のストライクゾーンにあまり投げないこともみてとれます。【図3、4】
- スライダー
追い込んだ後に投球割合が高くなっています。特にカウント3-2では7割を超える高い確率で投球されています。【表12、13】
右打者に対しては、外角低めに上手く制球されており、内角にはほとんど投球されません。
左打者に対しては、低め中心であるものの、時折真ん中に入る場面あるようです。【図5、6】
- チェンジアップ
右打者にはあまり投球されません。左打者に対してカウントを整える場面で投球されています。【表16、17】
コースは外角低めに徹底して投球しています。【図7、8】
アーチャー投手への対策
4シームを狙い撃ち!左打者起用で攻略へ
アーチャー投手はメジャーで活躍する先発投手です。少ない球種ながらも多くの奪三振を奪うアーチャー投手は徹底した対策なしに攻略は出来ません。そして攻略のカギを握るのは左打者でしょう。
アーチャー投手は左打者相手には4シーム、スライダー、チェンジアップを投球します。4シームはカット気味に伸びてきますが、左打者の内角にあまり投球されません。外角高めに多く投球されるため、逆方向に長打が打てる左打者を起用することでチャンスが広がるでしょう。
一方、右打者は攻略が容易ではありません。カット系の4シームと、高速かつ大きく変化するスライダーは、右打者にとっては難敵といえます。高速で大きく変化するスライダーを攻略するのは簡単ではなく、外角低めのボールに手を出さず我慢することが最大のポイントとなるでしょう。
右打者に対してはチェンジアップをほとんど投球しません。内角よりのボールを思い切って狙いましょう。
- まとめ:アーチャー投手攻略法
- 変化の大きなスライダーを見極めろ
- 左打者は逆方向に長打を!
アーチャー投手は非常に奪三振の多い投手です。右打者の多い日本代表にとって天敵となりうる存在かもしれません!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)