プロ大注目!大阪桐蔭・根尾昂投手の球質データを公開!カット系の速球とは?
プロ野球ドラフト会議もあと2日に迫った。今年の注目は何といっても大阪桐蔭・根尾昂選手だろう。
大阪桐蔭の主力として投手、遊撃手、外野手など多くのポジションを守りながら3度の全国制覇に貢献し、プロ入り後もどのポジションで起用されるのかが注目の的となっている。
今回は、今季の根尾選手の「球質」データを分析し、紹介していく。「投手・根尾」はどんなボールを投球しているのだろうか。
根尾投手のストレートは「カット系」の球質!?
今回は「ボール変化量」という指標を使って根尾投手の球質を紹介していく。これはボールが「○○センチ曲がった」のように、球質を客観的に表現できる指標で、これまで主観で語られてきたボールの「ノビ」や「キレ」を表現することができる。
詳しくは後述するとして、ひとまずこのボール変化量をプロ平均や金足農・吉田投手と比べてみよう。
参考:金足農・吉田輝星投手の球質を公開!プロ投手を上回るホップ成分とは!
根尾投手のストレートは、高校生平均やプロ平均と比べてシュート成分(横の変化)が極端に少ない特徴的な球質だ。
意外かもしれないが、実はほとんどの投手のストレートがシュートしている。打者は平均的な「シュートする」ストレートの軌道をイメージして打席に立つが、根尾投手のストレートはほとんどシュートしないため、打者からするとまるでカットボールのように感じる。日本人メジャーリーガーではダルビッシュに近い球質だ。
参考:ダルビッシュ、田中将大のストレートはどんな変化?
また、ボールの「ノビ」を表現するホップ成分(縦の変化)に関しても、高校生にしてすでにプロ平均並みの数値を記録している。最高球速150キロ以上のボールも有しており、プロ投手と並んでも遜色ない能力を持っていると言っても良いだろう。
回転数ではボールの質がわからない?「ボール変化量」を解説
ここまで「ボール変化量」を使って根尾投手の球質を解説してきたが、回転数ではいけないのか?と疑問に思った方もいるかもしれない。
一見、回転数が多いボールはノビるように感じるボールという印象を持ちやすい。しかしながら、必ずしも回転数の多さとボールの変化の大きさは一致するとは限らない。
その理由はボールの回転軸の方向にあり、回転数「だけ」ではどんなボールかわからないということだ。
一方で、ボール変化量は回転数や回転軸の影響を受けて「ボールがどれくらい変化したか」を直接計測できる(図2)。
具体的には、重力の影響のみを受けてボールが到達した地点を原点としたとき、揚力の影響を受けてボールがどれくらい変化したのかを数値化した指標である。実際に浮き上がることはないが、ほとんどの投手のストレートは原点(図中青線)よりも左上に到達する(右投手の場合。図中黄線との差がボール変化量)。
整理すると、回転数は回転軸と併せて変化を決定する「原因」であり、ボール変化量はそれに伴って実際に変化した「結果」であるのだ。
「投手・根尾」はまだまだ伸びしろあり!?
回転数とボール変化量の関係が整理できたところで、根尾投手の球質と今後の可能性を考えていきたい。ボール変化量に加え、回転数と回転軸のデータをみるとより飛躍の可能性を残した投手であった(表1)。
名前 (所属) | 回転数 (rpm) | 回転軸角度 (°) | 縦変化 (cm) | 横変化 (cm) |
---|---|---|---|---|
根尾昂 (大阪桐蔭) | 2242 | 51 | 41 | 4 |
吉田輝星 (金足農) | 2125 | 68 | 53 | 10 |
表をみると、回転数は根尾投手の方が高いものの、ホップ成分は金足農・吉田投手の方が大きい。その理由は回転軸にあり根尾投手のボールの方が「ジャイロ回転気味」であるのだ。ジャイロ回転気味のボールは揚力を受けず変化が小さくなる。逆説的にいえば、回転軸の角度が改善されるとボールは更に変化し、ボールの「ノビ」も大きくなるというわけだ。
球速で言えばすでに150キロを超えるボールも投球しており、球質も特徴的だ。「ノビ」の大きなストレートとなればプロ入り後も空振りを量産し、さらに大きな活躍を期待できる投手だろう。
遊撃手として起用されるのか、大谷翔平のような「二刀流」に挑戦するのかはまだわからないが、投手としても活躍が楽しみな選手だ。
次回は大阪桐蔭の根尾・藤原両選手の打撃データについて紹介する。「打者・根尾」のデータも楽しみにしていてほしい。
(敬称略)
引用
神事努(2013): プロ野球投手のボールスピンの特徴 . 日本野球科学研究会第一回大会報告集:24-26
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Baseball Geeks編集部