プエルトリコ代表の分析(ルーゴ投手編)
今回は、プエルトリコ代表であるセス・ルーゴ投手(以下ルーゴ投手)を分析します。WBC2017年ではベネゼエラ戦、アメリカ戦に先発し、勝利に大きく貢献しました。決勝戦での先発が予想されており、優勝を目指す日本代表にとっては攻略しなければならない投手です。
ルーゴ投手のプロフィール
アメリカ合衆国ルイジアナ州シュリーブポート出身のメジャーリーガーです。現在はMLBのニューヨーク・メッツに所属しています。2016年シーズンは、ルーキーイヤーながら5勝を挙げるなど、好成績を残しました。
投球結果の割合(空振り割合、ゴロ割合等)
高いフライ割合
ルーゴ投手の成績の中で特徴的なのがフライ割合です。4シーム、2シーム、チェンジアップのフライ割合がMLB平均を上回っています。
2シームに関してはMLB平均の約2倍となる33%と非常に高い値となっています。ルーゴ投手はフライを中心に打ち取るという特徴が読み取れます。【表1】
球種 | スイング割合 (Sw Rate) | 空振り割合 (Whf/Sw) | ゴロ割合 (GB/BIP) | ライナー割合 (LD/BIP) | フライ割合 (FB/BIP) |
---|---|---|---|---|---|
4シーム | 49% (46%) | 22% (19%) | 27% (36%) | 32% (28%) | 32% (27%) |
2シーム | 43% (44%) | 12% (13%) | 48% (56%) | 20% (24%) | 33% (16%) |
スライダー | 47% (49%) | 27% (36%) | 43% (46%) | 23% (25%) | 20% (21%) |
チェンジアップ | 56% (54%) | 28% (33%) | 52% (50%) | 24% (20%) | 24% (20%) |
カーブ | 41% (40%) | 34% (32%) | 52% (51%) | 33% (24%) | 14% (20%) |
カッコ内はMLB平均
球種毎の投球割合と球速差
速いスライダーと球種の多彩さ
球速を見ると、スライダーが平均球速を大きく上回っています。他の球種はMLB平均とほぼ同じスピードとなっています。
さらに、投球割合を見ると、多くの球種をバランスよく投球していることがわかります。多彩な球種が武器の一つといえるでしょう。【表2、3】
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 149 (149) | 100 (100) | 156 (154) | 26 |
2シーム | 148 (149) | 99 (100) | 155 (153) | 27 |
スライダー | 140 (136) | 94 (91) | 152 (144) | 25 |
チェンジアップ | 139 (137) | 93 (92) | 144 (144) | 7 |
カーブ | 127 (125) | 85 (84) | 134 (135) | 15 |
カッコ内はMLB平均
球種 | 平均速度(km/h) | 平均速度(%) | 最高速度(km/h) | 投球割合(%) |
---|---|---|---|---|
4シーム | 150 (149) | 100 (100) | 156 (154) | 25 |
2シーム | 148 (149) | 99 (100) | 155 (153) | 34 |
スライダー | 139 (136) | 93 (91) | 153 (144) | 11 |
チェンジアップ | 138 (137) | 92 (92) | 143 (144) | 10 |
カーブ | 126 (125) | 84 (84) | 133 (135) | 18 |
カッコ内はMLB平均
球種毎の変化量
カーブの落差とスピンレートはメジャー随一
MLB平均と近いボール中、カーブにルーゴ投手の大きな特徴をみることができます。
また、全ての球種において高いスピンレートを記録しています。では変化量を球種ごとにみていきます。【図1、2】【表4、5】
参考:メジャーリーグで投球される球質の特徴~ボール変化量とは~
※薄色は各球種のMLB平均
- 4シーム
変化量はMLB平均とほぼ同じです。
- 2シーム
変化量はMLB平均とほぼ同じです。
- スライダー
変化が少ない特徴があります。高速に小さく曲がるボールといえます。
- チェンジアップ
多く投球している対左打者ではMLB平均とほぼと同じ変化量です。
- カーブ
MLB平均と比べ、ドロップ成分の変化量が28cmも大きくなっています。
また、スライド成分も8cm大きく、縦に大きく曲がるカーブを投球しています。この曲がりの大きいカーブの原因の1つがスピンレートであり、3300rpmを超えています。
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2316 (2253) | 44 (45) | 24 (23) |
2シーム | 2326 (2159) | 35 (34) | 39 (38) |
スライダー | 2333 (2264) | 19 (13) | -1 (-5) |
チェンジアップ | 1823 (1787) | 35 (26) | 34 (34) |
カーブ | 3322 (2413) | -43 (-15) | -25 (-17) |
カッコ内はMLB平均
球種 | スピンレート(rpm) | 縦の変化量(cm) | 横の変化量(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 2326 (2253) | 43 (45) | 24 (23) |
2シーム | 2311 (2159) | 33 (34) | 39 38 |
スライダー | 2361 (2264) | 16 (13) | 0 (-5) |
チェンジアップ | 1725 (1787) | 29 (26) | 36 (34) |
カーブ | 3314 (2413) | -46 (-15) | -26 (-17) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のリリースポイント
低いリリースと長いエクステンション
リリース位置を見ると、MLB平均値と比べてリリース高が非常に低い値になっています。【表6、7】
リリースが低いことによって、4シームに大きな伸びを感じるでしょう。エクステンションがMLB平均値よりも非常に長い値になっています。
平均的な球速であるルーゴ投手ですが、体感スピードはより速く感じるかもしれません。この二つが高いフライ割合に繋がっているといえます。
カーブはリリースがほかの球種より高く、エクステンションも短い値となっています。大きな落差を持つため、上向きに投球せざるを得ないと推察されます。
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 161 (180) | 37 (50) | 197 (188) |
2シーム | 158 (178) | 39 (54) | 198 (187) |
スライダー | 164 (181) | 39 (56) | 190 (178) |
チェンジアップ | 163 (179) | 37 (54) | 195 (188) |
カーブ | 173 (187) | 43 (53) | 176 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種 | リリース高(cm) | リリース横(cm) | エクステンション(cm) |
---|---|---|---|
4シーム | 162 (180) | 39 (50) | 197 (188) |
2シーム | 159 (178) | 40 (54) | 198 (187) |
スライダー | 164 (181) | 44 (56) | 189 (178) |
チェンジアップ | 164 (179) | 38 (54) | 197 (188) |
カーブ | 176 (187) | 44 (53) | 177 (173) |
カッコ内はMLB平均
球種毎のカウントとゾーンからみた特徴
ボール先行カウントで傾向あり!
ルーゴ投手はカウントによって球種の傾向が顕著に表れています。ボールが先行したカウントではほとんど変化球を投球しないことです。また、球速はストライクで追い込むと速くなる傾向があります。では、球種別にみていきたいと思います。
- 4シーム
高めとアウトコース低めのゾーンに多く投球されています。【図3、4】
また、追い込むと球速が速くなる傾向があります。3-0では50%の割合で4シームを投球しています。【表8】
- 2シーム
対右打者では、ど真ん中、インコースのゾーンに多く投球されています。対左打者ではアウトコース低めのゾーンに41%も投球されています。【図5、6】
ボールカウントが先行しているときに投球割合が増えることからも、ストライクを取る球種として使われていることがわかります。【表12、14】
- スライダー
低めが多く右打者に対してアウトコースのゾーンに投球されています。【図9、10】 対左打者には、外からストライクゾーンぎりぎりに入れてくるようなボールを投げるという傾向もあります。
また比較的早いカウントで投球しています。【表16、17】
- チェンジアップ
低めのゾーンに投球されています。【図11、12】 また、ストライクゾーンへの割合も多いボールとなっています。
投球割合は全体的に低く、初球や追い込んだ後にはほとんど投球されません。【表20、21】
- カーブ
アウトコースと低めのゾーンに多く投球されています。ボールに強い回転を与えなければならないため、抜けるボールも多くなっているものと予想されます。【図13、14】
ルーゴ選手への対策
直球系ボール狙い打て!
ルーゴ選手の組み立ての中心は4シームと2シームです。特に早いカウントでは変化球の投球割合はあまり高くないため、4シーム、2シームに絞って狙うべきと考えます。
さらに、変化量はメジャーリーグ平均と同じため、比較的狙いやすいボールといえます。一方でリリース位置が低く、変化量以上に伸びを感じるので、フライを打たされないような意識が必要かもしれません。
また、ルーゴ投手は変化量の大きいカーブを武器として持っています。変化量が非常に大きく、打ち崩すのは容易ではありません。投球割合が低く、ボール球も多いので、捨てる勇気をもつことが攻略につながるでしょう。
- まとめ:ルーゴ投手の攻略法
- 早いカウントの直球系のボールを狙う。
- リリースの低さで伸びることを意識。
- カーブの落差はお手上げ!捨てる勇気を持つ!
※Baseballsavantリニューアルに伴い、一部データを更新しました(2017/6/22)
Baseball Geeks編集部