サイ・ヤング賞候補フリードを分析!大きく落ちるカーブが最大の武器
メジャーリーグ(以下、メジャー)の投手にとって、最も権威のある「サイ・ヤング賞」。今シーズンのサイ・ヤング賞は、日本時間11月17日に発表される。ナ・リーグの候補者は、サンディ・アルカンタラ(マーリンズ)、マックス・フリード(ブレーブス)、フリオ・ウリアス(ドジャース)の3人だ。今回は、今シーズンのトラッキングデータから、フリードの投球を分析していく。
5球種をバランス良く投げ分ける
まず、各球種の球速と投球割合についてみていく(表1)。
4シームや2シームといった速球系の球速はメジャー平均ほどだ。特徴的なのはカーブだろう。平均球速は120キロを下回っており、メジャー平均よりも10キロ近く低速である。投球割合をみると、4シームが中心となっている。変化球もそれぞれバランスよく投球されており、打者に的を絞らせない投球をしているといえる。
参考:【2021年】4シームはリスクが高い?最新データから球種別の特性を探る
続いて、各球種のボール変化量についてみていく(図1)。
投球の中心となる4シームはホップ成分が小さな「垂れる」球質だ。また、シュート成分もメジャー平均より小さく、いわゆる「真っスラ系」の球質である。空振りを奪うというよりは、ゴロを打たせるのに適しているといえる。2シームのシュート成分はメジャー平均よりも小さいが、速球のシュート成分が小さい分、打者は「大きく変化している」ように感じるだろう。チェンジアップはメジャー平均よりも落ちる球質であり、空振りを奪いやすい球質であるといえる。
フリードの最大の武器であり、40%を超える空振り率を誇るカーブはメジャー平均よりも大きく落ちる球質だ。球速も非常に低速であり、打者のタイミングを外して空振りを狙うことができる。また、スライダーは高速に小さく変化する球質で、バットの芯を外してゴロを打たせるのに有効だろう。
ゴロを打たせて取る投球スタイル
ここで、リスク管理表をみてみよう(図2)。
完全アウトはメジャー平均ほどだが、ゴロの割合はメジャー平均を大きく上回っており、空振りを奪うというよりゴロを打たせることで失点リスクを下げていることがわかる。また、四死球割合が非常に低く、「K/BB(Strikeout to Walk ratio)」は5.31とリーグ3位の数字を記録している。
「K/BB」とは、奪三振数を与四球数で割った比率のことで、奪三振数が多く四球が少ないと値が大きくなる。 この値が高い投手は奪三振能力が高く制球に優れていることを示し、一般的には3.50を超えると優秀な投手とされる。
また、他のサイ・ヤング賞候補者であるアルカンタラやウリアスと比較すると、被バレル率・被打球速度・四球率で優れていることがわかる(図3)。特に、被バレル率は驚異の4%と今シーズン規定投球回に到達した投手の中で最も低く、「長打になりやすい打球」を打たせていないといえる。中でもカーブは、一度もバレルゾーンに到達する打球となっていない。フリードのカーブは低速で打球速度が高まりにくく、ドロップ成分が大きいため打球角度もつきにくい。被バレル率が非常に低い要因であるといえるだろう。
参考:注目の指標バレルとは?打球速度と打球角度の重要性
メジャー屈指の技巧派は栄冠を勝ち得るか
ここまで、フリードの今シーズンの投球をトラッキングデータからみてきた。今シーズンは、先発として30試合に登板し14勝を挙げ、防御率2.48という素晴らしい成績を残した。球速はメジャーでは決して速い部類ではないが、特徴的な速球を軸にゴロを量産する投球スタイルで勝ち星を積み重ねてきた。最有力候補者こそアルカンタラとされているが、サイ・ヤング賞受賞となるのだろうか。
- マックス・フリード
Max Fried
1994年1月18日生まれ 左投左打
ブレーブス(2017ー)
【MLB通算】125試合 54勝25敗 防御率3.09
【受賞歴】シルバースラッガー賞(2021年)、ゴールドグラブ賞(2020年、2021年、2022年)
BaseballGeeks編集部