前田健太の好投の秘訣!惜しくもノーノーを逃した試合を分析!
ツインズ・前田健太の躍進が止まらない。日本時間19日のブルワーズ戦でみせた、8回まで無安打無得点の好投については多くの野球ファンの耳にも届いているだろう。球団新記録の8者連続三振を含む12個の奪三振を記録するなど、その実力を遺憾なく発揮した。
今回は、この日の好投の秘訣を昨シーズンの投球データと比較することで分析していく。
4シームを「投げすぎない」投球スタイル
まずは、各球種の球速・投球割合をみていく(表1、図1)。球速に関しては、昨シーズンと比べて大きな変化はみられなかった。しかし、投球割合をみると4シームの割合が減り、2シーム・チェンジアップの割合が増えるなど変化があった。
球種 | 球速 (km/h) | 球速割合 (%) |
---|---|---|
4シーム | 148.2 →147.3 | 100 →100 |
2シーム | 147.8 →145.8 | 99.7 →99.0 |
チェンジアップ | 136.7 →135.1 | 92.2 →91.7 |
スライダー | 134.4 →133.0 | 90.7 →90.3 |
カーブ | 124.2 →125.0 | 83.8 →84.9 |
多くの投手は4シームの投球割合が最も高く、その半数以上を占めることも珍しくない。このように、1つの球種への依存度が高いと打者は狙い球を絞りやすくなる。しかし、前田はこの日の試合で4シームを2割程度しか投球していない。一方で、チェンジアップとスライダーの投球割合はそれぞれ3割を超えている。複数の球種の投球割合が高いと、まるでじゃんけんで相手が何を出してくるかわからないように、打者は球種を予測することが困難になるだろう。
参考:速球は最も飛ぶボール? 球種別で見られる打球特性とは
さらに落差を増す最大の武器!
続いて、各球種の変化量に焦点を当てていく(図2、3)。4シームは、球速・変化量が平均的であることから、空振りを奪いやすいボールとはいえない。そのため、変化球中心の投球することのメリットはかなり大きいといえる。
チェンジアップの変化量は年々大きくなっており、空振りを奪う能力も増している。落差が大きなこの球種が最大の武器であるといっても過言ではないだろう。スライダーは変化量が横に広がっており、カットボールのように近く動くボールと曲がりが大きなボールの2種類が投球されている。前者はゴロを打ち取るのが得意で、後者は空振りを奪いやすい。前田は場面に応じてこれらを器用に投げ分けているのかもしれない。
参考:ドジャース前田健太投手快投の鍵は「落ちる」チェンジアップ
19日のブルワーズ戦でもこれら2球種が投球割合の約7割を占めており、投球の中心となる重要な役割を担っていた。
惜しくも安打を許した低めのチェンジアップ
最後に、惜しくもセンター前ヒットを許し、ノーヒットノーランを逃すことになった投球をみてみよう(図4)。
打たれたのは最大の武器であるチェンジアップだった(図4、赤いひし形)。しかし、決して甘いコースに投球されたわけではなく、ボールゾーンに逃げていく落差が大きなボールだった。これは、打ったブルワーズの9番打者ソガードを称賛するしかないだろう。
ここまで、多くの注目を集めたブルワーズ戦での前田の投球をみてきた。好投の裏には、4シームだけに頼らず、特異な変化球を組み合わせて勝負する投球スタイルが隠されていた。惜しくも大記録達成は逃したものの、今後も変わらず圧巻の投球でチームを牽引してくれることに期待したい。
Baseball Geeks編集部