【独占インタビュー】中日ドラゴンズ郡司裕也が語る野球データ論
今冬、慶応大学の郡司裕也選手(中日ドラフト4位)は、国立スポーツ科学センターの森下義隆研究員の協力のもと、打撃の動作解析を行った。
今回は、ネクストベース・アナリストの森本を聞き手に、スイング軌道や身体の動作分析のフィードバックを受けた感想を聞いた。さらに、大学時代のデータ活用法や、プロでの目標についても詳細に語ってもらった。
打撃練習にデータをどう活用したのか?
森本 いよいよプロという実感がわいてきたと思いますが、いま感じていることがあれば教えてください。
郡司 今は不安が多いです。どんなトレーニングをやるのか、どんなスケジュールで進んでいくのか、何が起こるかわからないので…。ただ、担当スカウト(近藤真一スカウト)から「自分以上のものを出さなくて良い」と言われ、普通にやればいいんだなと少し気が楽になっています。
森本 今回、打撃の動作分析をしてフィードバックを受けた感想や、自身の感覚との違いがあれば教えてください。
郡司 大学時代から計測機器を使っていたので打球速度やバットの軌道等簡単なデータはわかっていたのですが、頭部の移動距離やスイングの角度といったデータは中々知る機会がなかったので、すごく新鮮でした。また、自分では角度も結構意識して打ったつもりだったのですが、思ったより角度が出てないなと感じ、そうしたことを知れたのもすごくよかったです。
森本 普段から気にしている打撃のポイントは、今挙げていたスイングの角度ですか?
郡司 打球速度は常に意識していますが、最近は角度をテーマにいかに打球に角度つけるかを意識していました。森本さんに、スイング角度19°が理想というお話を以前聞いていて、それに近づけられるようにやっていたんですけど…あんなに意識してこんなもんかっていうのが正直な感想です。
森本 大学時代から測定していたとのことですが、普段の練習や試合前はそれらを使ってどんな調整や練習をしてきましたか?
郡司 スイングセンサーはたまに確認する程度でしたが、打球速度はバッティング練習でほぼ毎日測っていました。部でランキングにしていてLINEで流れるんです。それで部員みんなで一つの指標として活用していました。
参考:【打撃特集3】打球速度はこれで決まる!5つの要因
森本 ちなみに部内では何位だったのでしょう?
郡司 日にもよりますが、だいたい3位以内には入っていました。
森本 ちなみにそのトップ3はどんな選手が?
郡司 郡司・柳町(ソフトバンク5位)・中村(トヨタ)が争っています。
森本 今回、スイングの角度は思ったより出なかったなということですが、これからどんな練習や取り組みをやっていきたいと思っていますか?
郡司 データのフィードバックをいただいて、頭の位置が上に上がってしまうとか、角度がもうちょい出せるとか色々と課題が出てきたので、それを色々試行錯誤してみたいと思っています。
キャッチャー目線では「ピッチトンネル」を意識
森本 慶應大学は、練習やリーグ戦でもトラッキングデータを活用してピッチャー陣を強化しているというは話題になっています。郡司選手がキャッチャー目線でどのようデータを活用していたのか教えてください。
郡司 一番は「ピッチトンネル」っていうものを意識してピッチャーとの会話をするようにしています。ストレートの軌道によって生かせる変化球も違うと思いますし、持ってる変化球の種類によってどうピッチトンネルを構成するかも変わってくると思うので。
ピッチトンネルという概念があれば「お前この球種があるのにこの球種はないな」みたいな話もしやすいんです。でもそれを知ったのは、ここ1年くらいで上級生になってからだったので…もっと早く知れていたら上級生との関わり方も違ったなと感じています。
参考:マリナーズ菊池雄星の新球種の創り方!感覚とデータが融合する最先端の「ピッチデザイン」とは
森本 ちなみに、ピッチトンネルの概念などはどういうところから情報を得たんですか?
郡司 森本さんのお話だったり…
森本 ああそうか!(笑)
郡司 あとは書籍や、最近ではSNSとかですね。
森本 ピッチトンネルの概念があることで、リードしやすくなった実感はありますか?
郡司 はい。こういうボールを覚えたほうがいいよっていうアドバイスもできるようになりました。
森本 これからプロに入っても同じような方法でピッチャーとコミュニケーションを図りたい?
郡司 はい。データから言えれば説得力も増すんじゃないかなと思っています。
森本 ドラゴンズのこのピッチャーの球を受けるのが楽しみや、このピッチャーのボールが気になる等があれば教えて下さい。
郡司 そうですね、いろいろ楽しみなピッチャーはいるんですけど、一人選ぶなら梅津(晃大)さんです。高校時代から知っていて苦労した時期も知っているので、去年の三連勝をみてすごいなと思いました。ただ、もっとデータから言えることもあるんじゃないかなと思います。
森本 おー、郡司選手的にはもっとピッチトンネル使えよと?(笑)
郡司 もっと使えるんじゃないかなと思っています(笑)。それを言いたいなってのが梅津さんにはあります。
森本 いいですね。他に気になるピッチャーはいますか?
郡司 柳さんです。記事で制球がすごく良いというデータをみて。そんなコントロールの良いピッチャーはあんま受けたことがないので、すごく楽しみだなと思っています。
目指すは「今時なキャッチャー」
森本 バッター・キャッチャーそれぞれの話を聞いてきました、これからプロにチャレンジするにあたって理想の将来像はありますか?
郡司 キャッチャーというポジションなので、ピッチャーや周りから信頼されなければいけないと思います。そのために配球一つ一つに根拠を持って説明できるようなキャッチャーじゃないといけないと思います。まずデータなんかをうまく使いながら、「今時なキャッチャー」になって、チームを勝たせたいです。
あと、僕はバッティングはまた別と考えています。キャッチャーだからバッティングは二の次ではなくて、どっちも両立しながらクリーンナップを打つぐらいの気持ちでやれればなと思います。
森本 ズバリ、今シーズンの目標はありますか?
郡司 今シーズンは一年通して一軍にいたいなって思います。
森本 応援しています!
郡司裕也選手のプロフィール
1997年12月27日生。仙台育英高校ー慶応大学ー中日ドラゴンズ。
高校時代は3年夏の甲子園で準優勝し、高校日本代表に選出された。大学時代にも日本代表を経験し、4年秋は神宮大会で優勝。3冠王にも輝いていた。
- 森本 崚太(もりもと りょうた)
株式会社ネクストベース・アナリスト。 トラッキングデータをはじめとした野球データの解析を担当。 プロ野球球団および選手にフィードバックやコンサルティング。菊池雄星投手ほかプロ・アマ多数の投手の球質測定やピッチデザインの支援も行う。昨年7月発売の「新時代の野球データ論」では記事執筆も担当。